「減速」の重要性

 「止観」といった瞑想方法や、「魔術や魔法」においては、「反転した空間」というものが出てくることになるが、一般的には、普通の人間は「反転した空間」といったものを捉えるのが苦手というのが常識になっている。
 しかし、例外的に、「反転した空間」を捉える方が得意な人がいるという場合もある。そもそも、生まれたばかりの幼児や、幼い子供というのは、「通常の空間」の感覚よりも、別の感覚を感じている側面が強いため、人間が元来持っているそうした能力が目覚めたままの人や、あるいは、特異な能力を持つ人は、普通とは違う異常な感覚を捉えることを簡単に感じることがある。
 ただし、その場合は、逆に「通常の空間」を認識する感覚が希薄であるということもある。

 また、これは「止観」において『禅定』の状態に没頭した場合もそうである。瞑想によって『禅定』の状態が深まってきて、その感覚に没頭していると、その状態でいる限りでは、「反転した空間」の感覚に没頭することが容易になってくる。
 それから、「天台小止観」の中で、『声聞(しょうもん)』と呼ばれる人達は、『禅定』の力が大きい…ということが言われていたが、そうした人達は「反転した空間」を知覚することは容易となっているわけである。しかし、その一方で、それが強過ぎるが故に、「仏性」を見ることができないということも言われている。

 そうした人達は、以下の「反転の図」において、「光速度より先」を知覚することは容易となっているが、「光速度より手前」を意識するのが難しくなっているということになる。

 以上のことから必要になってくるのは、「光速度より先」を行っている意識を「減速」させることである。
 そして、この「減速」が、「止観」において「観」に対応しているというわけである。

 ここで、意識の「減速」が上手くいくことで、意識を「光速度」の状態ピッタリにすることができるが、それは「ミクロ」の状態を維持することでもあるし、意識をコントロールすることでもある。
 この状態は、「止」にも転じることができれば、「観」にも転じることができる状態であるため、「止観」という瞑想方法において重要になってくるわけである。
 また、これができるようになることで、仏教で『中道』と言われている境地が開けてくることにもなる。
 


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