8.堕天の識

・それは少々、謎が深い存在である。

・謎が多い存在であるので、『????』と記述することにしたが、便宜上、名付けるなら、『堕天の識』と名付けることにする。以下、ここについては、『堕天の識』という名称で説明する。

・「天上の領域」との、壁を作っている存在である。

・「天上の領域」より下から見れば、このように不可解な闇のような存在だが、「天上の領域」より上から見れば、また違った存在となる。

・『赤の勢力』は、『中心の存在』にとって、時に「悪」のようなイメージとなる存在だったが、この『堕天の識』は、それ以上に「闇」の深い存在である。

・これより上の領域は、構造が違うので解き明かすのが難しい、同様に、『堕天の識』も難しく、その難しさは、恐らくその構造の違いから来ている。


・『堕天の識』は、カバラの「生命の樹」では、「ダァト」に対応するものだが、これは不思議な存在である。

・まず、「非セフィラー」とされ、セフィラーには含まれていない。よって、カバラでは、全部で、11の要素が存在するが、「ダァト」を抜いた、「10」という数が強調される。

・なぜ、「ダァト」だけ、「非セフィラー」とされ、特別視されるのか?
 恐らく、それは、「ダァト」より高次元である、「ケテル」「ホクマー」「ビナー」の三つと、その三角形が作る領域があるが、その領域が、これまでの領域とは、あまりに構造が違っているからである。
 カバラにおいて、「ケテル」「ホクマー」「ビナー」の作る三角形は、究極的な概念と、構造を持つ。それぞれ、1、2、3を司るわけだが、これが、4へと移る際に、確実に、「ダァト」は関わってくる。ここでの、「1、2、3」が究極的であるが故に、「4」への移行時に、「ダァト」を含めずに移行するような、何かの構造があるから、セフィラーに「ダァト」は含まれない。恐らくそういった理由である。

・または、「ケテル」「ホクマー」「ビナー」の領域から、「ダァト」を扱う場合、「ダァト」の要素は、「ビナー」が含むから、「ダァト」が無視されると見ることもできる。

・まとめると、ここより上次元の領域に存在する、1、2、3の三角形の構造は、究極的で崇高で扱いにくく、「ダァト」もまた、その不可思議な存在に絡んでいるということである。


・セフィラーとセフィラーを繋ぐ経路のことを、「パス」というが、パスの仕組みも、これより下の領域においての構造と、上の領域からみた場合の構造とに違いがある。
 下の領域から見た構造は、現在、上の図で示している通りの形になるが、これは、伝統的に伝えられているセフィロトのパスの形とは異なる。
 伝統的な形では、「ケセド」と「ビナー」、「ゲブラー」と「ホクマー」を繋ぐパスはなく、代わりに、「ビナー」と「ティファレト」、「ホクマー」と「ティファレト」を繋ぐパスがある。
 これはどういうことかというと、恐らく、『堕天の識』より上次元にある「ケテル」から見た視点においては、この形が正しいことになる。
 そして、この形においては、『堕天の識』にあたる「ダァト」は、「非セフィラー」とされる。
 このように、この場所を境に、セフィロトを見た時の構造が変わってしまうことがある。

・それから、「ダァト」は、別名、「高次の知識」とされる。下次元にとっては、「ダァト」は、まがまがしいものの象徴として映るものだが、それより高次元の領域からだと、また価値が一変する。
 高次元の領域からの見方だと、「ダァト」は、「高次の知識」であり、高次の存在を下位に降ろすのに、必要不可欠な存在である。


・『堕天の識』は、惑星では、恐らく「土星」が当てはまる。

・「土星」は、西洋占星術においては、「試練」と「忍耐」を司っており、克服する必要のあるものとして君臨している。
 それは、「教師」や「父」といった姿で象徴され、非常に厳しいものを司る。

・それは、「天上の領域」入りを拒むかのように君臨している。

・「土星」は、時として凶星として捉えられるが、一概に悪い存在かどうかは、やはり分からないものである。

・また、「ダァト」は、「知識」と呼ばれるが、恐らくそれは、高次元の者にとってのそれと、下次元の者にとってのそれは、まったく違う。
 高次元の者にとっては、それは「高次の知識」と言われ、万物を変容させ、進化と発展をもたらすような、高度な数学や科学にも似た、偉大なる知識のことをいう。
 しかし、下次元の者にとっては、それは、どちらかというと、意識進化の道を阻む方向性を持つような、惰性的な「知識」にあたる。

・「土星」も同様に、凶星として捉えられるような局面もあるが、神聖な星として捉えられるような局面もある。

・恐らく、それは「試練」の価値を理解し、それを克服した時、その価値が一変するようなものである。

・また、「土星」は、カバラにおいて、「ビナー」が割り当てられている。
 これは、「土星」「ダァト」「ビナー」の謎の深い所だが、確かに、「土星」は恐らく、「ビナー」にあたることも考えられる。
 その時の「土星」のイメージは、恐らく、試練を司る凶星のイメージではなく、それの克服を司る神聖なイメージを持っている。


・ヌーソロジー的には、ψ8が当てはまる。ψ8の意識構造は、原子の中の「中性子」に対応していると言われている。

・それは、ψ7の対立物として存在し、「すべての人間が、時空が絶対だと思い込んでいるような意識」に該当する。
 ψ7は、ヌーソロジー的な「愛」に該当するが、それの対極の存在である。
 
・「絶対時空の意識」であるが、特に、「時間」が主体性を持ってる存在である。
 
・「土星」は、時の神「クロノス」と関係があると言われているが、「時間」がキーとなっている。「時間」の捉われを克服することは、『堕天の識』の試練を克服することに繋がってくる。

・ψ8は、ψ7とのペアで、「元止揚空間」を作っている。
 次元ユニットの全体構造としては、「土星」「ダァト」に対応する『堕天の識』によって、一旦、閉じた世界が作られている。
 
・ψ8は、ψ6と同様、始めは忌むべきものとして認識されるが、やはり、ψ7とψ8との等化によって、「ψ9」を見出すのに必要なものである。
 ψ7とψ8は、元止揚空間最後の対化であり、その等化が見えた先は、今までとは全く違った世界が見えてくる。


・『堕天の識』は、「人間にとっての絶対的な時空」を作っている存在でありながら、「科学」を発展させる方向性を司っている。

・そもそも、「科学」とは、人間が「時空が絶対である」と信じ込むことによって、発展するものである。
 よって、「科学」によって、人間が新しい知能を手にすることも、自然を破壊して堕落するようになることも、元々は、「時空」を作る意識によって、引き起こされている。

・このように、「時空」は「科学」と同じように、人間を自然の破壊者にするか、それとも未知なる物質・知能を扱う、進化した存在となる為のきっかけを作るか、そうした試練を、世界に対して与えているような存在にあたる。


・『堕天の識』は、かなり強力な「悪」として振る舞うことがある。
 それは、時空間に幽閉され、科学と資本と物質か、あるいは偽物の宗教しか信仰のないものが、何を考えるかどうかである。
 『堕天の識』における「悪」とは、それにあたる。

・それは全くといって良い程、『青の勢力』の示すような本質的な「愛」の形を、根本的に持っていない存在かもしれない。


・『堕天の識』は、天上世界とその下を阻む「壁」のようなものである。
 そしてこれは、「言葉の壁」にも該当するものとなる。

・人が何か物事を言葉でものを伝える時、言葉で表現される前の「伝えること」が存在し、それは、概念的な「イデアの世界」にある。
 この「イデアの世界」は、人間が容易に到達できない、神のいる場所である「天上世界」でもある。

・言葉が、「イデアの世界」から、現実に表現される際に、そこに「壁」が生じる。
 その「壁」が、『堕天の識』に、丁度該当する。

・その「壁」は「イデア」の領域との「壁」にもあたり、形而上学において、言葉による議論を重ねてきた哲学者達が、必ず突き当たっていた「壁」である。

・真理を目指す人間は、この「壁」を、何かしらの方法で、突破しなければならない。
 
 
・『青の勢力』を自分のものにすると、真の「天上の領域」と呼ばれる場所への道が見えることになるが、これに加えて、『堕天の識』を自分のものにすると、「天上の領域」とされる「上次元の領域」と、それより「下次元の領域」、この二つはどういった関係性を持っていれば良いのか、双方のその存在のあり方などが分かってくる。
 『堕天の識』という門を境とする、「上次元」と「下次元」の関係まで見えてくるのだ。
 「上次元と下次元の関係や、仕組みが見え、その二つの在り方まで見えてくる」。『堕天の識』を会得し、上次元へと昇りつめると、『堕天の識』はこうした力を持つ。
 『堕天の識』に対応する「ダァト」が、「高次の知識」と呼ばれるのは、恐らくそれが理由である。


・『堕天の識』もとい、「土星」の変貌ぶりは、「月」の変貌ぶりに似ているかもしれない。
 ヌーソロジー的には、ψ8の凝縮化により、ψ*2を見出すことができる。ψ*2は、月と『境界線上の自我』に対応しているので、この二つは関係のある所である。


・『青の勢力』の叡智を持ち、『堕天の識』の試練を克服した時、一つの閉じた世界から抜け出し、次の高次元の世界へと参入することができる。『青の勢力』だけでも、参入の道筋だけは見えるが、『堕天の識』も克服すると、その強度が違ってくる。
 それは、真の「天上の領域」と呼べるような場所であり、真理を司っている領域であるので、ここでは『真理領域』と呼ぶことにしている。
 カバラでいうと、「ケテル」「ホクマー」「ビナー」の三角形のある場所、「アツィルト界(元型界)」と呼ばれる場所である。
 そこが、永劫のゴールというわけではないが、いよいよ、「真理」との対面ができる場所へと、参入することができる。




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