7大惑星の階層構造

 「グノーシス思想」は、キリスト教内部で発生した「グノーシス主義」という様になると、特有の考えを持つようになります。
 しかし、そのベースにあるものは、先ほどのヘレニズム時代にできた「グノーシス」の考え方に基づく宇宙論です。

 有名なのが、反宇宙的な考え方であり、この宇宙を作り出したのは「善の神様」と言えるような志向神であるが、人間の世界を作り出したのはそれとは別に「悪の神様」と言えるような神様だという風に考えられています。この「悪の神様」にあたるのが「デミウルゴス」などとも呼ばれています。
 人間はこの「デミウルゴス」の作り出した地上の世界から、自らの中にある神性を認識し、至高神のいる天上の世界へと向かう…というのが、グノーシス思想の簡単なシナリオとなります。
 従って、「人生は牢獄である」といった風に捉えるのも、グノーシス思想の特徴となります。

 その他にも、こうした「善と悪」、「真と偽」、「霊と肉体」、「イデアと物質」、「男性原理と女性原理」といった二元論で物事を捉え、古代から伝わる膨大ともいえるような情報がまとめられた、奥深い思想が伝えられていますが、ここでは「惑星」に関する所だけ簡単に説明します。

 グノーシス思想の持つ宇宙観と、その全体像を簡単に図に表すと、以下のようになります。

 まず、天上が、いわゆる善なる至高神のいる場所にあたります。人間はここより地上に住むことになります。
 そして、地上にて、自らの神性を認識(グノーシス)していくことにより、「星辰界」と呼ばれる領域へと参入し、そこから至高神の持つ神性へと近づき、最終的に天上へと至ることができます。その際に、星辰界にある7つの天球と言われる領域を通過することになりますが、この7つの天球が、それぞれ、月⇒水星⇒金星⇒太陽⇒火星⇒木星⇒土星といった、7つの惑星が当てはめられています。
※尚、ここでの惑星の考え方は、西洋占星術での考え方と同様に、太陽や月も惑星と同列として扱われます。

 もう少し詳しい情報としては、以下の図があります。


※書籍「グノーシスと古代宇宙論」より引用

 この図は、グノーシス思想の中にある「オフィス派の宇宙図」と言われている図を、再構成した図です。
 この図に描かれている、グノーシス思想のより 正確な世界観として、月と地上の間や、土星や天上との間、さらにその先には特別な階層もあり、これについても諸説があります。また、この図は、2世紀頃に存在したオフィス派と呼ばれる一派が用いていたものですが、グノーシス思想にはそれ以外にも様々な一派があり、そこでもまた詳細な世界観が色々と述べられていますが、大まかには、地上近くと、7つの階層と、天上近く、という構成になります。

 以上のように、古代の人は天体として見える惑星を、何か人間にとって特別なものと捉えていました。
 こうした見方は、西洋占星術の発展にも現れています。


 以上の全体像から言えることとして、つまり、グノーシス思想の世界観には「天上から地上へ、また地上から天上へ」という、反復構造がそこにあるというのを見出すことができます。
 そして、惑星は、その地上から天上へ還る際の、重要なユニットとして存在しています。
 こうした、惑星を意識進化の為のユニットとして捉える考え方は、近代魔術のカバラにも導入されることとなります。

 現代において、宇宙に存在する惑星というのは、実際に地球と同様にその姿が観測され、加えて、宇宙の仕組みも、古典物理学というフレームの中で解明されたせいか、宇宙空間で遠心力と万有引力といった力のベクトルによって回り続ける、只の巨大な石の塊だという認識が一般的となっています。
 しかし、古来から伝わる神秘学的な惑星の解釈によれば、それぞれの惑星は、我々の精神とも関わりのある、神々が表れているものと解釈され、それが我々の意識の変容にも関わっています。
 また、それらは、「天動説」から生まれた価値観であり、主観的な立場から星々を観た場合、それらが自分達を中心に廻っていて、そこに何か神聖なものを感じるという感覚は納得することができます。
 しかし、現代は、言うまでもなく「地動説」が主流の視方であり、こうしたことは迷信だと切り捨てられることになりますが、天動説から生まれていた、神秘的な思想というのも、非常に価値のあるものです。
 再び、地動説型の思考から、天動説型の思考を、見直してみる必要があります。