ラカンの「鏡像段階論」

 ジャック・ラカンという心理学者がいます。
 ラカンは、人間の無意識や深層心理について、かなり構造的に捉えた人ですが、その中で「鏡像段階論」という説を唱えました。

 「鏡像段階論」とは、簡単に説明すると、幼児がどのようにして人間の自我を形成していくかについての話です。
 まず、人間の幼児は、生まれてすぐの状態では、「これが自分だ」という、「統合された自分自身のイメージ」というのを持っていないと、ラカンは言います。
 そこで、例えば、鏡に映った自分の姿を見たとき、はじめて「これが自分だ」という意識が芽生えて、それを元に自分自身の自我のイメージである「想像的自我」というのを形成していきます。
 また、「他者」との絡みが主に重要であり、「母親」や「父親」など、「他者」と接しながら生活することで、「他者にとっての自分」というイメージを形成していきます。そして、それが、最終的に「想像的自我」と言われる、自分自身の「自我」となっていきます。
 ここで、「他者」が「自分自身を映す鏡」としての機能を果たしていて、それらが映し出している「鏡像」から、「自我」を形成していくということになります。

 つまり、人間は「他者の視線」というのがあってこそ、「自分という自我」が生まれるという話です。
 ラカンの心理学は、この「鏡像段階論」をベースにして、展開されていきます。