バランスを取る意義

 結局の所、「止観」の修習は「バランス」の重要性を意味しているということになる。

 普段の人間は「動」の世界にいる。それは、心や身体がよく動いている世界であり、常にあわただしい状態にある「外在世界」にあたる。
 仏教では、『五蘊(ごうん)』と呼ばれる、「色・受・想・行・識」の五つの要素で、ありとあらゆるものごとの認識が起きているという教えがあるが、我々が住む外在世界もそれによって生まれているものだと言うことができる。
 まずは、そうした世界から離れて、身体を「静」の状態にして、「内在世界」へと進むようにするのが「止」ということになる。
 そして、そこから内在にのみ没頭するのではなく、外界との接点を探るのが「観」だということになる。

 それらの「止」と「観」を合わせて行うのが「止観」であり、これは「内在世界」と「外在世界」、「主観領域」と「客観領域」を行ったり来たりすることにもなり、最終的にはそれらの「バランス」が重要となってくる。
 そして、そうしたものの双方を行ったり来たりすることによって、仏教で『中道』と呼ばれている境地や、『仏性』を悟るようになるというわけである。
 


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