先日、イデアサイコロジーの記事で「タナトス(死の欲動)」について書かれていました。
◆【YouTube2000万回再生】若者にYOASOBI『夜に駆ける』が刺さった理由
音楽ユニットYOASOBIの曲『夜に駆ける』でそれが表現されているという話です。
そんでもって、この音楽を作ったAyaseさんは、
元々はボーカロイドを使って音楽を作っている人みたいでした。
「タナトス(死の欲動)」とは「エロス(生の欲動)」の対極概念で、
「死に向かっている」かのような欲動だけど、
「死」や「ネガティブさ」とあえて向き合い、その深淵に潜っていくことで
逆にそこから生きる意義を見出していったり、
生命力を湧き出すことができるような・・・そんなものです。
「死」に誘われることが堕落に向かうと、ただの「虚無」にしか向かわないけど、
そこから反転して前向きな方向に行くと新しい可能性を開けるもの。
そういう二面性を持った深淵みたいな概念が「タナトス」です。
そんでもって、ボーカロイド音楽でタナトスを表現してるようなものは何かあったか?
と思い出してみたら、その辺はかなり心当たりがあったのでそれについて書いていきます。
ピノキオピーさん
まずは、自分が前にも紹介したことがあるピノキオピーさんから。
「アイマイナちゃん」というお化けみたいな独創的なキャラが登場しつつ、
なんだか独特な雰囲気の曲を作る人です。
この人の作品は、タナトス的なネガティブさをユニークに表現している気がします。
曲の紹介は先の記事の中に書いてあるので割愛します。
先の記事ではついでに「スキゾ」の説明もしています。
スキゾとはスキゾフレミア(分裂症)の傾向を簡易に呼んだもので、
[逃げるヒト、ギャンブル、マイナー]みたいな意味を持ちます。
スキゾの方向性とタナトスの方向性ってのはほぼ一緒なので、
スキゾの長所≒タナトスの長所と思ってもらって良いです。
・ピノキオピーさんマイリスト
米津玄師さんことハチさん
何だかとても有名になったらしい、米津玄師さんです。
ボカロ作家としての名前はハチさん。
個人的にはメジャーデビュー後の話はそんなに関心は無く、
むしろ昔はこういう不気味な曲を作る天才だったイメージがあります。
この人はそんな不気味な曲も作るし、白く浄化されたような曲も作ります。
個人的にはこういう感じの曲の方が好きです。
米津玄師さんは強いタナトス力を秘めた有名アーティストだと言えるでしょう。
wowakaさん(現実逃避P)
ピノキオピーさんも好きですが、
wowakaさんもめっちゃ好きなスキゾ系作家です。
wowakaさんの異名は「現実逃避P」で、
独創的なピコピコサウンドとモノクロなコンセプトで、
スキゾフレミア感のある曲を作る人です。
同じボカロ作家である米津玄師さんも、
wowakaさんのことは一目置いていたらしいです。
そんなwowakaさんは・・・
自分と同い年ぐらいなのに亡くなってしまったんだよぉぉぉぉぉぉぉ!!
◆「ヒトリエ」のwowakaさんが死去 享年31歳、急性心不全で(動画) | ハフポスト
wowakaさんのことは決して忘れないで生きたいと思います。
irohaさんとkumaさん
タナトスネタというと、これは外せない!というぐらい有名な曲が『炉心融解』。
作曲はirohaさん、作詞はkumaさんらしいです。
この曲はニコニコ動画全盛期に一位を取って話題になりました。
まさしく美しい「死の衝動」(タナトス)を表現した作品です。
古典として語り継ぎたい名曲だと思います。
きくおさん
きくおさんは、自分が知る中では一番病んでる感があって能力の高い作家です。
実はヌーソロジーとも縁があって、
『シュタイナー思想とヌーソロジー』の編集をやっていた江口さんがプロデュースしてた
KAKEZONプロジェクトのPV音楽作りに抜擢されました。
そんなわけで、ヌースにも音楽にも理解が深い江口さんも一目置いてる作家でもあります。
以下がきくおさんの作品です。
しかしながら、きくおさんの良い作品を探したけどなかなか難しかった・・・
とりあえず再生数が多いのを抜擢してみたけど・・・
恐い!なんか凄く恐いよ!
前向きかどうかはさておき、純粋なタナトス力の高さで言ったら一番な人かもしれない・・・
cosMoさん(暴走P)
cosMoさんは『初音ミクの消失』とか『初音ミクの暴走』とかが有名だけど、
かなり特殊な曲が作れる特別な才能を持った人だと思います。
病んでる人がテーマということだったら、自分が好きな曲は以下です。
創作をやってる人の葛藤という感じ。
あと、これも凄い好きです。「死」とかじゃなくて「0(ゼロ)」を表現した曲。
そう。こういう無機物みたいな概念をモチーフに作れる天才がcosMoさんなんで、
そういう所がとても好きです。
のぼる↑さん
のぼる↑さんはどっちかというと曲は明るくて格好良いことが多い人ですが、
歌詞が闇を含んでる感じでシリアスな印象があります。
この曲は、出だしは暗くてモノクロな所から始まる曲ですが、
暗い⇒明るいのグラディエーション的な変化が特徴的です。
これも曲は格好良くて割と明るめだけど、
歌詞はシリアスという感じです。
れるりりさん
れるりりさんは「タナトスを表現してる」っていうか、
露骨にメンヘラ向き?な曲を作ってる人です。
『地獄型人間動物園』というアルバムを出しています。
代表作っぽいのが以下の『脳漿炸裂ガール』。
かなりのハイテンポ、ハイテンションな曲です。
うーん・・・まぁこれはタナトスというか、まるっきりエロスですね。
ただ、極端なエロスはタナトスに通じてることもあるし、
極端なタナトスはエロスに通じてることもあるし、
境界例っぽさはあるんじゃないでしょうか?
自分のお気に入りは以下のやつです。
これもタナトスというか、エロスとサヴァイバル感がありますね。
じんさん(自然の敵P)
じんさんといったらもう言うまでもないってぐらい超有名所。
カゲロウプロジェクトという一連のシリーズの作者で、
ストーリーに出てくるキャラクターも人気がある作品。
自分は小説も買っているんで大ファンです。
この人の作品もそのまんま死にたがりって感じという印象があります。
中高生にとても受けてたりするらしい。
Sasakure.UKさん
最後に、個人的にNo.1ミュージシャンと思ってるSasakure.UKさん。
この人はもう超多彩なのでなんでも作っちゃいますが・・・
「終末」を表現した終末シリーズは有名です。
◆「終末」シリーズとは (シュウマツシリーズとは) [単語記事] – ニコニコ大百科
あとは、以下の曲あたりを紹介しときます。
『不謌思戯(ふかしぎ)モノユカシー』シリーズに収録されてる曲。
この人は哲学者のように繊細な感性を持ちながら、
すごくポップなものも作れる人なんで、
死の世界観をポップに表現するのが抜群に上手いです。
新世代のスキゾ文化であるボーカロイド
以上。色々とタナトス感がある曲たちを紹介していきました。
表現方法も病み方も人それぞれなんで、雰囲気もそれぞれで全然違うのも特徴的だと思います。
こういった多様性みたいなものも、今の時代の特徴と言っても良いでしょう。
初音ミクを代表するボーカロイドのカルチャーというのは、
とてもスキゾ的であることは『ピノキオピーさんの曲と音楽とスキゾフレニアについて』の記事でも書きました。
それと同様に、ボーカロイドの曲では「死の衝動」とか「タナトス」的なものを表現してるものが多い気がします。
ボーカロイドを使った曲はとにかく、技術的に引きこもりでも作れるので、
それによってオタクが底力を発揮しやすくなったという側面は大きいと思います。
もちろん、自分が前に『初音ミクの曲で好きなものを39曲選んでみた』などで紹介した曲の中には、
これはパラノ系かエロス系か? それからこれは・・・?
みたいなのも多くありますが。
ニコニコ動画の全盛期が2010年付近ぐらいまでにあって、
その時期に多くのボカロ作家達がランキング上位争奪戦で盛り上がって有名になってた覚えがあります。
そこから先の2010年代は一段落した後の成熟期って感じなんで、
成熟と共に状況が変化していってることも起きてるかもしれませんが・・・
このあたりは21世紀を象徴する文化だと思っているので、
個人的に着目しています。