前回は2007年から2012年にかけてのオタク界隈について書いていった。
2006年には一通りのWebサービスが出そろい、家庭用ゲーム機も十分なレベルまで進化した。
その後、ニコニコ動画から普及したコンテンツが盛り上がる現象が起きた。
2008年からスマートフォンが出てくるようになり、デジタルコンテンツはそれを元にさらに盛り上がっていくようになった。
2011年にアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』がインパクトを放ち、他にも面白いアニメがたくさん登場していた。
2012年にはスマホゲーム、マッチングアプリ、Youtubeなどがそれぞれ盛り上がる流れが来たし、2010年代からはスマホとYoutubeの時代といっても過言ではないかもしれない。
個人的には、自分(Raimu)は「東方」「初音ミク」「エヴァ」あたりにルーツを持つ、
生粋の「セカイ系」好きであるが、そんな立場として、果たしてこれからの展開に期待できるのだろうか?
引き続き、2013年以降のオタク界隈では何が起きていったか?についてを追っていく。
2013年から出てきたもの・起きたこと
2013年:アニメ『進撃の巨人』
まずは2013年に『進撃の巨人』がアニメ化した。
2009年から連載が始まった原作である。
原作を読んでる人は既にそっちにハマっているためあまり関係ないが、アニメ化によってこの作品がさらに普及した。
主題歌の『紅蓮の弓矢』がNHK紅白歌合戦入りしたし、その知名度によってさらなる人気を獲得するようになった。
今現在でも人気が高く、アニメも放映中で盛り上がっている。
2013年:ブラウザゲーム『艦隊これくしょん』
ブラウザゲーム『艦隊これくしょん』がリリースされた。
内容は「艦隊を美少女化しました。」みたいな、最近の日本でありがちな美少女擬人化ものだが、ゲームとしての出来が良くて普通に面白いのでハマる人が続出した。
PixivやTwitterでもイラストが盛り上がり、二次創作も盛り上がった。
色んなイラストレーターが参加してキャラデザインがされているため、色んな絵柄のキャラクターがいるのも特徴的である。
これがブラウザゲームや擬人化ゲームの代表的な成功例の一つとなり、近似したゲームが今後も出てくるようになる。
(女性向けのヒット作だと2015年の『刀剣乱舞』が有名である。)
2013年:アニメ『ラブライブ!』
この辺りでアイドルアニメ『ラブライブ』が流行るようになる。
プロジェクト自体は2012年からのスタートで、アニメは2013年からスタートしているため、そこからずっと普及して続いていく。
アイドルものと言えば『アイドルマスター』も有名だし、売れそうな路線なためやりたがる企業も多そうだが、『ラブライブ』はズバ抜けた人気が出て有名になった。
ちなみに、2015年の以下の記事によると、その当時に中国の若者で人気だったのは『ラブライブ』『艦これ』『東方』の三つらしい。
◆中国の若者で人気なのは『ラブライブ』『艦これ』『東方』の3つ! 中国人が日本アニメを愛する理由は 日本人も気づかない「寛容性」にあり | やらおん!
この三つの存在感は海外でも強いことが分かる。
2013年:スマホゲーム『モンスターストライク』
2013年に『モンスターストライク』がリリースされる。
出したのは株式会社MIXIであり、当時はSNS『Mixi』の方が衰退していた状況だが、路線変更で出したゲームが成功する。
大体、2012年に出たスマホゲーム『パズル&ドラゴンズ』を追って作られたようなゲームだが、アクションとパズルの違いもあって、これはこれで別物として成功するようになる。
最終的には、2022年現時点でのセールスランキング総合一位のアプリとなっていて、パズドラをも追い抜いている。
後追いからの開発だが、若者へのマーケティングが成功した結果だと思われる。
ここから先のゲーム業界は、そうした成功を目指してスマホゲームやソーシャルゲームの勢い止まらずといった感じになる。
201?年:ゲーム開発エンジン『Unity』の進化
実は2010年代で特徴的だったことは・・・
ゲーム開発エンジン『Unity』がどんどん進化していったことである。
Unityは無料でも使用可能なゲーム開発エンジンであり、スタートは2005年だったが、どんどんバージョンアップして新しいのが作られていった。
2010年にUnity 3が登場。さらに2012年にUnity 4、2015年にUnity 5・・・とどんどん進化していった。
特に、スマホゲームが普及したあたりからゲーム業界では「クロスプラットフォーム」が重要視されるようになった。
クロスプラットフォームとは、iPhoneでもAndoidでもブラウザでもパソコンでも家庭用ゲーム機でも動くようなゲームが作れるように、様々な機種に向けての開発ができることである。
Unityでもそれに対応することで、スマホゲームの普及とともにUnityが普及するようになっていった。
2000年代でも個人によるゲーム開発は影ながら盛り上がっていたが、2010年代ではUnityによるゲーム開発によってさらに盛り上がるようになった。
201?年:電子書籍がだんだんと普及していく
2010年代は電子書籍が徐々に流行っていく時代でもあった。
電子書籍の発想自体はとても古くからあって、Amazonが初めて『Kindle 1』を出したのは2007年のことである。(初代iPhoneがアメリカで発売されてからちょっと後)
しかし、特にメジャーで流行った動きはないまま記憶から消えていくようになったため・・・
「本を電子化してもそこまで便利でも安くもないし、やっぱり紙の本が良い」という意識は根強かった。
だんだんと普及していったのはいつ頃からだったのか?
2012年にGoogleが『Nexus 7』を、Appleが『iPad mini』の販売を始めた。
これらはコストパフォーマンスの良いタブレット端末であり、電子書籍を読むのに非常に優れていた。
さらに、2013年の『Nexus 5』や、2014年の『iPhone 6』など5インチ以上のスマホが登場した。
これも電子書籍を読むのに最低限の大きさがあるため良かった。
上記の端末によってAmazonのKindleやその他電子書籍がかなり読みやすくなったのか、電子書籍アプリもどんどん普及していくようになる。
メジャー所だと、集英社が2014年に『少年ジャンプ+』を配信するようになる。
2014年:Webサービス『note』
割とこれはTwitterユーザーやテキストで活動する人向けだが・・・
2014年にwebサービス『note』がリリースされた。
世間では海外産のWebサービスが普及することが多い中、これは国産のWebサービスで、Twitterと併用して使っている人が多い印象がある。
noteはテキストを売ることができるシステムが画期的であり、ビジネスとして収益まで可能なシステムになっているのも特徴的である。
電子書籍が流行する風潮と並行して、こうしたものも影ながら流行っていくようになる。
2015年:Netflixが日本でサービス開始
サブスクリプション制の動画見放題サービス『Netflix』がとうとうやってきた。
今現在でもお世話になってる人は多いだろう。これのおかげでアニメやドラマが見放題なサービスである。
他にも、AmazonプライムやHuluやdアニメストアなどでもアニメをたくさん見ることができるが、先駆けとして有名なのはNetflixなため、この辺りからサブスクリプションでアニメをたくさん観るのが、オタクや一般人の間で割と当たり前になってきた。
2015年:WiiU『スプラトゥーン』
任天堂からWiiUソフト『スプラトゥーン』が発売されて、「オタクが遊んでるのをよく見かけるゲーム」のように人気なゲームとなった。
オンライン銃撃シューティングゲーム(FPSやTPS)から実銃を使う要素を取り除き、ポップな感じに仕上げつつも、インクで塗るという独自のコンセプトは日本中・世界中でヒットした。
Nintendo Switchでも続編の『スプラトゥーン2』や『スプラトゥーン3』が出るため、そちらも人気である。
そもそも、任天堂が『Wii U』を出したのは2012年だった。
しかし、「Wii U GamePad」を使用するアイディアがイマイチ微妙だったため、ハード独自の強みがなかなか出せないでいたが・・・
恐らく一番強みを出してヒットした商品はスプラトゥーンである。
歴代売り上げもWii U内において堂々一位を記録した。
2016年:アニメ映画『君の名は。』
新海誠監督によるアニメ映画『君の名は。』が放映され、記録的な大ヒットになった。
興行収入は250億まで行き、アニメ映画だとこれより上は316.8億の『千と千尋の神隠し』しかないレベルの記録となった。
(2021年にそれより上が登場するが・・・)
作者の新海誠は、1996年にゲーム会社の日本ファルコムに正式入社して働き、2001年に退職。
2002年に『ほしのこえ』を自主制作して発表した。
「セカイ系」にも該当する独特な作品をほぼ一人で作った(声優以外)ということで、アニメ好きの間で注目されていた。
この作品がネット上の口コミによって話題を呼び、多数の章を受賞するほど有名になる。
DVDは6万本以上の売り上げを記録。
さらにそこからインディーズながらスタッフを集めて、2004年に初の長編作品『雲のむこう、約束の場所』を制作。
次に、2007年に『秒速5センチメートル』を制作。
ズバ抜けた背景作画能力、詩的な文学センス、シナリオ作成能力を持ち合わせていたため、
オタクの間ではクリエイターとして有名な人物だったが、
あくまでオタク界隈の中に留まった存在みたいなものでもあった。
そして、『君の名は。』がとうとうメジャーヒットして、一般人にまで広く知られるようになる。
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』で有名な田中将賀によるキャラクターデザインが一般の人にウケたのも大きいと思われる。
元々はオタクカルチャー的なセンスを色濃く持っていた新海誠だが、一般受けするセンスを持ち合わせていて、その部分の才能がこの作品でいよいよ開花したわけである。
一般人に通用するオタク的能力者が表れ、その力が大きく発揮されるようになったため、「オタクカルチャーのメジャー化」の流れの一貫でもあると言える。
元々はオタク界隈で天才作家として注目されていた新海誠だが、「オタク受けもリア充受けもする天才作家」となった今後の作品にも注目したい。
2016年:スマホゲーム『ポケモンGO』
Nianticがスマートフォンゲーム『ポケモンGO』をリリースした。
かなり一般受けをしたので知らない人はいないだろう。
また、「ポケモン」も知らない人がいないぐらいに有名コンテンツである。
1996年に発売されたゲームボーイソフトが元となる「ポケットモンスター」はほとんどの人が知ってるだろうが、大人でポケモンのゲームまでやってる人となると、やはりオタク限定のように限られてくる。
しかし、ポケモンGOはゲームをやらない大人たちの間でもやる人が続出した。
ここでのポイントは、やはりAR技術のヒットである。
スマホの画面でリアルの世界にバーチャルのポケモンが表れるのはまさしくAR(Augmented Reality:拡張現実)であり、ここまで普及したゲームにそれが使われるのは史上初のことであった。
普通はゲームといったら家で引きこもってやり込むようなものだが、外に出て歩き回りながらゲームができるという仕組みをAR技術が可能にした。
だから外で動くのが好きな一般人にもこれが大きく人気が出た。
「ポケモン×AR技術×スマホゲーム」による記録的な大ヒットである。
2016年:アニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』
2016年。世間では色々なアニメが有象無象に登場し、どれを特筆するべきか分からなくなる・・・
そんな中でも特筆すべきアニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』が登場した。略称は「リゼロ」である。
このアニメが特徴的なのは、小説投稿サイト「小説家になろう」で投稿された作品であることと、
「異世界転移・異世界転生系」のジャンルの作品であることである。
現実世界にいる主人公が、不意な出来事によって異世界に行くみたいな「異世界系」のジャンル自体の歴史は古い。
古典だと1950年のC・S・ルイスの『ナルニア国物語』がそれみたいな話になるし、日本だと1992年の『十二国記』が有名作品として存在する。
それはそれとして、「小説家になろう」発の作品は『ゼロの使い魔』や『ソードアートオンライン』がヒットしてから、異世界系のジャンルも数多く投稿されるようになり、
現代ラノベ風の「異世界系=なろう系」なジャンルがだんだんと確立されるようになる。
特に、最近よく見かける異世界系のルーツを辿ると、2012年に連載開始し、2016年にアニメ化されたリゼロの影響が大きそうなため、その辺りからの兆候らしい。
個人的に、2000年代から色んなアニメを観て育った自分(Raimu)が、
このアニメを観た正直な感想は、
「いよいよ自分じゃついていけないようなノリの人気アニメが登場した。」
だった。
「異世界系=なろう系」ジャンルの確立と共に、2010年代は、2000年代と違った新たな価値観と時代の流れがあり、その兆候がアニメの内容に表れるようになった・・・そんな予感がした。
オタク文化はどんどん新しい方向に進んで行ってる気はしたが、いよいよさらに新しい時代の到来だろうか?
さて、近年の異世界系の作品は一見すると「異世界」ということでファンタジーよりのように思えるが、実際の内容は現実的なものだったり、現実的に思いつきそうな世界がメインなため・・・
以下のマッピングだと、どちらかというと真ん中より左に位置すると思う。
それから、後述するアニメと比べると、
『Re:ゼロから始める異世界生活』は「サヴァイブ系」よりの異世界系アニメである。
2016年:アニメ『この素晴らしい世界に祝福を!』
さて、近いジャンルの作品でもう一つ、『この素晴らしい世界に祝福を!』のアニメが始まった。
略称は「このすば」であり、これも「小説家になろう」発の作品で、異世界系である。
「リゼロ」は主人公が不意に異世界に転移する「異世界転移」系だが、
「このすば」は主人公が一旦死んでから異世界に転生するので「異世界転生」系である。
こっちも個人的には「自分じゃついていけない」ように思ったため、中身はほとんど観てないが、「リゼロ」と比べるとかなりギャグよりの内容であり「空気系」の方に該当する。
他に「小説家になろう」発で有名どころだと、2012年の『無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜』や、2013年の『転生したらスライムだった件』あたりだろうか?
これらも後にアニメ化するようになって一層有名になっていく。
2016年:Fantia
これは割とクリエイターや同人活動を行う人向けだが、
2016年に『Fantia』がリリースされた。
これもPixivやnoteのような国産Webサービスであり、
「クリエイター支援プラットフォーム」と呼ばれるものである。
Pixivのように作品を発表できることに加えて、有料プランを設定することが出来たり、ユーザーから投げ銭のような課金を受け取ることができるようになった。
また、2018年にPixivが『pixivFANBOX』をリリースした。これも似たようなサービスであり、クリエイターがお金を受け取りやすくなった。
2010年代はこのような課金システムや販売システムが充実するようになった時代でもあると思う。
これもオタクの生き方を支えるものとして重要である。
2017年:Nintendo Switch
2017年。任天堂が新ハード『Nindendo Switch』を発売した。
これは今現在も続く人気ハードなのは言うまでもない。
『Wii』の頃から奇策を用いるようなスタンスが見られた任天堂だったが、『Wii U』はハード独自の強みが活かせるイメージがなかなか湧かなくて苦労してる様子だった。
しかし、『Nintendo Switch』はちょっと原点回帰したのか
「どこでもシンプルにゲームがしやすそう」なコンセプトとなった。
それでいてタッチパネルは顕在であるし、片手で振って使うことができるジョイコンも搭載した。
それから、それと同時期に『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』が発売された。
これのコンセプトや世界観がすごくウケて、2021年開催の『国民5万人がガチ投票!テレビゲーム総選挙』で堂々の一位を獲得するほどの人気になった。
これのヒットによって「オープンワールド系」のゲームがすごいと認識されるようにもなり、ゲーム業界で近いコンセプトの作品が出るようにもなる。
そもそも、任天堂は2015年に岩田聡社長を亡くしている。
55歳の若さで持病により急死するような、本当に不慮の出来事だった。
岩田聡といったら天才プログラマーとして活躍していた上に、32歳の若さでハル研究所の社長をやってて任天堂に移籍した天才社長でもあり、
「ゲーム人口の拡大」の基本戦略をニンテンドーDSの辺りから見事に達成しつつ、他のゲーム企業とは違った独自のアイディアに挑戦し続けるスタンスを貫いた偉大な人物である。
それから先の任天堂は、岩田社長の理念を引き継ぐような形の経営方針を固めて、役員達で協力するように経営されることになった。
そんな任天堂がゲーム業界を切り開くハードとして、『Nintendo Switch』で新たに勝負をかけるようになったわけである。
2017年:フォートナイト
ここで、FPSやTPSなど、オンライン3Dシューティング系のゲームに注目してみよう。
FPSやTPSといったジャンルのゲームは昔からあって発展していたが、近年、バトルロイヤル要素を加えたバトルロイヤルゲームが流行るようになる。
先駆けとして挙がるのは、韓国が開発した『PUBG』である。
対応プラットフォームはWindows, Xbox, PlayStation 4で様々なハードでプレイできる。
TPSゲームであることに加え、オンライン上の100人のプレイヤーが同じマップ上にあちこちで降りて、フィールド上に落ちてある武器を拾いながら、最後の一人になるまで戦うゲームである。
韓国のゲームなので韓国で大ヒットすることから始まり、日本にも普及するようになった。
他にもTPSゲームだと、アメリカが開発した『フォートナイト』が有名である。
これは2017年に公開されたバトルロイヤル系のオンラインゲームであり、対応プラットフォームはこちらも広く、
Windows, Xbox, PlayStationの他、Mac, Nintendo Switchでもプレイできる。
このゲームは三つのモードが存在して、そのうちの一つがバトルロイヤルモードであり、最大100人のプレイヤーが最後まで生き残るために戦うルールである。
他にもグループを作って戦うものや、2チームに分かれて戦うものなどもある。
基本プレイ無料でできるようになっているが、キャラクターの外見を変えたり、色んな追加パックを販売することによって収益を得ている。
また、フォートナイトは銃撃戦で相手を倒していくのは他のTPSゲームと一緒なのだが、「クラフト」と呼ばれる操作によって、壁・階段・床などの建築物を作りながら戦う。
そんなわけで「銃撃しながらクラフトする」という少し忙しいゲームである。
欧米では社会現象になった売り上げが出たほどの人気らしい。
当然、その人気によって日本にも伝わり、Nintendo Switchで基本プレイ無料が可能なこともあり、小学生がプレイして流行することも起きている。
ついに小学生がバトルロイヤル系のTPSゲームをする時代になった。
それから、この二つのゲームは両方とも「eスポーツ」の対象となっているため、そっち方面でも盛り上がっている。
昔から根強い人気のある銃撃戦ゲームは、最先端のオンラインバトルロイヤルゲームとしてより確立したジャンルになっていく。
2017年:Vtuber四天王
オタク界隈でいまをときめく存在、Vtuber。
この時期からいよいよそれが表れるようになる。
「Vtuber四天王」と呼ばれる者達が出てきてからその人気に火がつくようになった。
Vtuber四天王とは、視聴者の人達が勝手に呼び始めたためオフィシャルな定義はないが、
初期は「キズナアイ・ミライアカリ・輝夜月・ねこます」の4人だった覚えがある。
そこに「電脳少女シロ」が加わって、「キズナアイ」が4人を統べるリーダーに位置づけられ、
最終的に「キズナアイ・ミライアカリ・輝夜月・ねこます・電脳少女シロ」の5人組の名称になった。
(キズナアイは2016年12月頃からの活動だったらしい)
Vtuberの登場の理由は、やはり技術の進歩によるものが大きいだろう。
とくに「ねこます」は四天王の中でも異端な個人勢で、本職はコンビニバイトをしているおじさんという、アイドル化とか絶対に無理そうな立場だったが・・・
VRモデルを自作して、映像をモーションキャプチャーで動かすやり方も試行錯誤して独自運営し、低水準な技術ながらも奇跡的に大ヒットして知名度を上げることができた。
Vtuberで一番困難なのは高精度な3Dモデルを用意することなので、『Live2D』で2Dモデルアバターを作る技術が使われるようになって、それによるVtuberも流行るようになる。
これ以降、世はVtuber時代の幕開けとなった!
2018年:スマホゲーム『アズールレーン』
2010年代はスマホゲームやブラウザゲームの発展期でもあった。
そのため、あれこれ山のような数がリリースされて押し寄せてくるため、多過ぎて特筆するべきものが分からなくなってくる・・・
しかし、それでも特筆すべきゲーム『アズールレーン』が登場した。
このゲームの何が重要かというと、中国人が中国で作った、純中国製のゲームなことである。
中国でもアニメやゲームが流行していて、発展もしていることは噂には聞いていたことである。
それから、日本で「艦これ」が流行ってから、それにインスパイアされたゲームが中国でたくさん作られたことも知られている。
しかし、ただのインスパイアゲームなら良いのだが・・・普通にネットに転がってるどっかの画像をそのまま使ったような著作権確実アウトなゲームが山ほどあり・・・日本でそれが紹介されては「中国のゲームはヤバいwww」みたいに認識されるのがオチだった。
しかし、『アズールレーン』に関しては正統派な精神で作られたゲームで、しかも我々日本人が「面白い。」と言うほどのクオリティだった。
イラストのクオリティも高く、日本のイラストに匹敵するものがいよいよ中国の人達が描けるようになったと実感できるものだった。
日本人としては面白いゲームや可愛いイラストが楽しめればそれで良い。
これまで中国のゲームやイラストがここまでの評価を受けることはなかったため、「中国がいよいよ来た。」ことを印象づけるものとして、このゲームの登場は画期的である。
2018年:アニメ『けものフレンズ』
ここで、アニメ界隈における伝説のアニメ『けものフレンズ』が登場する。略称は『けもフレ』。
近年、大量にアニメが作られて消費されていってる中、良作アニメの有象無象はいろいろと作られていたが、久々に殿堂入りクラスにズバ抜けたアニメが大ヒットした。
まず、このアニメの何がズバ抜けていたかというと、数字上も伝説的な記録を出したことである。
「ニコニコ動画」の公式配信のアニメの再生数は、これまでは『ご注文はうさぎですか』の第1話だったが、『けものフレンズ』の第1話がそれを短期間で追い抜き、1000万再生を突破した。
(今現在は1475万を越えてぶっちぎっている)
また、低予算アニメであることも伝説である。
もともとこの作品は『けものフレンズプロジェクト』というメディアミックス作品の一つであり、漫画とゲームアプリも先に並行して作られていた。
しかし、ゲームアプリの方はそこまでのヒットに至らず、プロジェクト失敗か?みたいになってしまい・・・
アニメを低予算で作らねばならない状況で、たつき監督に製作権を渡される。
そして、このたつき監督が大天才で、「声優以外の仕事は全部一人でできる」と噂されるほどの化物アニメクリエイターだった。
「敗戦処理」とまで言われたプロジェクトのアニメを低予算でスタートして・・・とんでもない人気アニメに仕立て上げることに成功した。
サーバルキャットのサーバルちゃんを始めとする声優達も全員新人声優だったが、一躍有名人になった。
たつき監督の描いたシナリオも伝説的だった。
『けもフレ』の世界は「なぜか人類が滅亡した後の世界」になっていて、どこか「セカイ系」を彷彿させるものだった。
また、動物が元になった「フレンズ」と呼ばれるキャラクター達が仲良く和気あいあいとする世界観は「空気系」のようだった。
それでいて、「どんな生き方も受け入れてくれる架空の動物の世界」は、現代人の心にめちゃくちゃヒットした。
そして、最終回も大好評で、続きがあっても良さそうな終わり方をした。
たつき監督を続投させて次回作を作れば大ヒット間違いなしであり、ビジネス的にも大儲け間違いなしである。
みんなやることを期待していたし、その可能性を信じて疑わなかった。
しかし、何故かたつき監督の製作権が剥奪されてしまう。
たつき監督降板の話は「たつきショック」と呼ばれるほどネットでは大騒ぎになり・・・
それから別の製作者による『けものフレンズ2』が作られて・・・
それが壊滅し、アニメ史に残る大不評エピソードとなるのだが・・・それはまた別の話・・・
2018年:「チー牛」というワードが流行る
オタク界隈にまた新たな用語が生まれる・・・
「チー牛」というワードがいつのまにかネットで流行っていた。
ルーツを調べるとだいたい2018年あたりが発端らしい。
「チー牛」は「すき家で三種のチーズ牛丼を頼んでそうな顔」の略である。
・・・なんのこっちゃ?という感じだが、詳しくは以下のページを見てもらった方が早い。
眼鏡をかけ、セットされていない短めの髪で、なんとなく冴えない男性が「すいません。三色チーズ牛丼の特盛りに温玉付きをお願いします。」と頼んでいるイラストが、ネット上で突如に拡散されて流行っていった。
そこから、「すき家で三種のチーズ牛丼を頼んでそうな顔=チー牛」というワードが流行るようになる。
元にイラストが作られたのは2008年のことだったらしいが、2018年に5ちゃんねる(旧2ch)のなんJのスレッドという場所で改めて上げられたのが発端らしい。
そこからさらにSNS上のあちこちで拡散されて有名になった。
「オタク」に「陰キャ」に「チー牛」・・・新たな差別用語の登場である・・・
思うに、「チー牛」は見た目を指したスラングなため、「オタク」や「陰キャ」よりも分かりやすいか?
「オタク」や「陰キャ」は差別用語の一面はあるものの、研究者気質で成果を出す人間はいるし、なんやかんやでネットで活躍する人間も出てきているおかげか、必ずしもネガティブな意味で扱われないようにもなっている。
一方で、「チー牛」は「見た目に気を使わないし、流されて生きているように頭悪そうな雰囲気してる奴」に該当する者が呼ばれるのかもしれない。
こうした新規用語の定着は「定義の再構築」や「概念の切り出し」のようでもあり、大きな意味があるように思う。
2019年:アニメ『鬼滅の刃』
『鬼滅の刃』のアニメがいよいよ登場した。
2021年のアニメ映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が400億越えで歴代最高の興行収入を叩き出したのは記憶に新しい。
原作は2016年であり、原作ファンはこの時から追っている。
当初は「打ち切り臭がする」とまで言われた連載作品なのに・・・だんだんと面白くなっていって目が離せない作品になった。
◆【悲報】少年ジャンプ新連載「鬼滅の刃」の打ち切り臭がヤバいwwww【画像】 : 最強ジャンプ放送局
原作を読めば分かるが、作者の吾峠呼世晴先生は当初そこまで絵が上手いタイプの作家では無かった。
けど、アニメになって絵が綺麗になったのは成功だと思う。
2010年代はサヴァイブ系のダークファンタジーがウケる傾向にあったが、その影響もあってヒットしたと思われる。
ちなみにアニメ放映開始の2019年4月時点だと、原作は「刀鍛冶の里編」の終盤辺りである。
原作は十分に面白いことは原作派の人は知っていた。
面白いのは知ってたけど・・・まさか映画があそこまでヒットするとは・・・自分的にはさすがに予想外である。
『鬼滅の刃』は劇場でヒットした無限列車編の面白さがピーク・・・なんてことはなく・・・
むしろそこからの方が面白くなる作品と思うので、今後のヒットにも期待したい。
2019年:Switch『リングフィットアドベンチャー』
あらゆるゲームが飽和した中でゲームが作られて、業界が低迷していく中、
岩田聡の理念を引き継ぐ任天堂は他の企業とは全然違う動きをする。
Nintendo Switchで『リングフィットアドベンチャー』が発売された。
これがまた革新的なゲームである。
Switchの二つのジョイコンを、リングコンと呼ばれる独自の道具に装着してゲームをプレイする。
このリングコンはほとんど筋トレ道具と呼んでも良いものであり、これによって筋トレをしながらゲームをするという、前代未聞の遊びができるようになった。
普通のゲームはVR(バーチャルリアリティ)的な思想で開発されていくことがありがちなのだが・・・
任天堂は「リアルの筋肉を鍛えよう」という方向に進んでいった。前代未聞である。
しかし、思い返せば『脳を鍛える大人のDSトレーニング』では「脳を鍛えよう」という方向だったし、『Wii Fit』では「健康になろう」という方向だったし、身体を動かすゲームは『Wii Sports』があったため、近い試みはこれまでされていたわけである。
こうした強みをまたしても活かすことができた任天堂は、引きこもって肉体が劣りがちなオタク達に身体を動かす機会を与えることに成功したのである。
これは後述するコロナ禍を支えるゲームにもなっていったかもしれない・・・
2020年:新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)
2020年・・・・いよいよ「ヤツ」が来る時代になった。
コロナウイルスと呼ばれるものの新型で、1本鎖RNAを持つRNAウイルスに該当するウイルス。
感染症の国際正式名称はCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)であり、病原体の正式名称は「SARS-CoV-2」らしい。
2019年の12月に中国の武漢市で検出されたものが最初の発生とされているが、だんだんと世界中に伝わるようになって大変なことになる。
日本だと2月、3月ぐらいまでは気楽に構えてる人もいたが、2020年3月24日に東京オリンピックの延期が決定した。
そこから「コロナ禍」と呼ばれる状況が本格的にスタートした覚えがある。
コロナ禍のオタクに対しての影響力は言うまでもない。
なにせ引きこもらざるを得ない状況が強制的に作り出されたため、ゲームやインターネットの類は当然、以前よりもみんなやるようになる。
引きこもりが得意なオタクにとってはどちらかというと向かい風とも言えるが・・・
かといって外に出づらくなったり直接対面がしずらくなるのは新鮮味が無くなってくるのであまり良い状況とも言えない。
そんな状況は今も続いていたり、微妙に回復してて前よりは良い感じになっていたりと・・・その辺は色々だと思う。
なんにせよ、2020年より先は「コロナ禍以降の時代」と呼べるものになるだろう。
・・・ということで、考察は一旦ここまでにしておく。
これまで起きたことの列挙
さて、話がめちゃくちゃ長くなってしまったが・・・
2000年~2019年で起きたことを列挙して、2006年までを「インターネット発展期」、そこからを「インターネット成熟期」とすると、以下のようになる。
2000年代から先の世の中は「○○が流行った」「○○が影響を与えた」とはっきり言えるような、時代の中心になるものが読み取りずらい時代になってきたが、間違いなく万人に何かしらの影響を与えているものといったらインターネットなため、
「インターネット発展期⇒インターネット成熟期」の流れは世代分析においても重要だと思う。
成熟期の情報事情
インターネットが発展し、成熟期になると何が起きるのか?
コンピューターによるデジタルデータ化が可能な作品は、そのままほとんど劣化しない品質で残すことができる。
また、インターネットによってそれは誰でもアクセスできるように流通される。
それがどんどん続くと、デジタルデータとなった作品がどんどん世の中に蓄積し、さらに流通量も増えることになるので、多様な情報を目にする機会が増える「情報過多」の現象が起きる。
そんな状況が2002年、2006年、2012年・・・・とずっと続いているわけである。
以下をコンテンツ群の情報とすると、それがどんどん増えていっているわけである。
さらに、増えていくだけでなくクリエイター達の製作環境が充実するごとに作りやすくなっていくし、デジタルデータだと高品質なまま保存されて劣化することなく残っていく。
こうした情報過多が進んでいくと、どうなっていくのだろうか?
それは色々と考えられる。
作品が多過ぎるとどれを見れば良いか分からなくなり、時間が足りなくなるかもしれない。
時間が足りない中でどれを楽しむか選別しなければいけないかもしれない。
たくさんあるものが決まったパターンの作品ばかりであり、飽き飽きするかもしれない。
しかし、飽き飽きするのは嫌なのでそれとは違った作品がどこかで出てくるかもしれない。
周りに作品が多過ぎると作り手側は売り上げを伸ばすのが難しくなるかもしれない。
そこでよりクオリティを洗練させて伸ばすことでヒットを出すべく必死にならなければいけないかもしれないし、奇想天外なことをやってどうにか目立とうとするかもしれない。
そもそも、今現在活躍できてる人は情報が増える前の黎明期に頑張ってた人達であり、増えた後に頑張って成功するには半端な努力と才能じゃ無理かもしれない。
そうして競争が激しくなっていく中で、より奇怪なことをして目立った者や、天才的なクオリティの者が成功するようになっているのかもしれない。
なんにせよ、情報過多によって受け手のモチベーションも作り手のモチベーションも以前と変わってくるわけである。
こうした「成熟期の情報事情」が、「インターネット成熟期」を生きる世代の主要な意識にもなっているのではないだろうか?
2010年代の所感
2013年以降については、個人的には「セカイ系」の作品好きとして果たしてどうなるだろうか?という視点から始めた。
しかし、実際にはスマホゲーム、ブラウザゲーム、Youtube、TPSにFPS、擬人化ゲーム、アイドルアニメ、なろう系アニメ、VTuberといったものの流行が出てきて、そのまま定着して発展が続いている感じになっている。
もちろん、他にも面白いものはたくさん出てきているが、メジャーな流れとしてはそんな感じだろうと思う。
生粋のセカイ系好きとしては、このようにセカイ系の作品がめっきり減ったことは、どうしても寂しく感じてしまう。
嘆かわしいことに、骨のあるセカイ系を作る作家がいなくなってしまったし、それがヒットする風潮も無くなってしまったのが現状なわけである・・・
・・・いや、むしろ古いのは昔の世代の感覚で生きている方で、今の時代は現状で起きてる結果が相応しいということだろうか?
普通の生活を目指すことすら大変になってきた社会では、セカイ系のように理解困難なものよりも、普通の生活を目指すための楽しさに優れたコンテンツの方が時代に合っているのだろうか?
思えば、難しい哲学や文学のようなことをやることができた時代は、そうする余裕があるだけの金や、経済的豊かさがあった時の話である。
そうなると、それがやりずらいとなったらひとまず経済的豊かさや安定を得る方に向かうのが当然だし、そうしたことにまずは憂いを持つべきなのではないだろうか?
そんな感じで、時代の変化というものを受け入れつつも、ずっと残したいぐらいに優れた古典的なものの良さも大事にしていきたい。
(2023/04/02:追記)2010年代で良かったアニメはもちろんある話
「セカイ系の作品がめっきり減った」ということで、
2013年以降はあんまり良いアニメがなくなったかのように書いたが・・・
超大ヒット作品というほどのレベルではない中なら、普通に放映されてて面白かったと思えるアニメだったらいっぱいあったとも思う。
そうした作品たちについては以下の記事で書いたので、Raimu厳選セレクションなアニメが観たい方はそちらをチェックしてみて欲しい。
これから何が起きるのだろうか?
さらに、2020年以降のこれからのオタク界隈はどのように進化していくのだろうか?
着眼点として重要なキーワードは「技術革新」であり、技術革新によってオタクに何が起きるかが、今後を読み解く上で重要となってくる。
今現在、技術面で目ぼしいジャンルは、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、AI(人工知能)、NFT(ブロックチェーン技術による代替不可能なトークン)・・・辺りだろうか?
それぞれの伸びしろはどこまで可能性があるかが今後はどうなるか?に関わってくる。
逆に、もしかしたらどれもそれほどの伸び代がないのであれば、デジタル系のオタク界隈はそれなりに現状が続いていく感じになるのだろうか・・・?
そんなわけで、引き続きテクノロジーの行く末についてを注目することが、今後の世の中がどうなっていくかを考えるにおいても必要であるし、オタク論においても重要である。
(次回、改めて「オタクとは何か?」について書くので、まだ続きます。)
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