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漫画版「新世紀エヴァンゲリオン」の結末について語っておく

投稿日:2019年4月29日 更新日:

Evatookuyuki

新作のヌーソロジー本『奥行きの子供達』が発売されました!
ヌーソロジーに絡んだ哲学、神話、精神分析学、歴史などのネタを使って、映画を解釈していこうという、今までにないアプローチの本です。

そんでもって、扱う映画の一つに劇場版『新世紀エヴァンゲリオン』(通称:旧劇場版エヴァ)がありました。
これについては『ヌーソロジー基本概要+(プラス)』でもちょこっと書きましたが、「現実に帰れ。」というメッセージが込められてると噂の、庵野監督による問題作として有名です。

しかし、それに対して「漫画版」のエヴァンゲリオンでは、旧劇場版の内容の補足がされていて、
これが先の本『奥行きの子供達』で不足が言われていた部分の補足にもなっています。
自分は2012年に放映された『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』を劇場で3回観たぐらいエヴァンゲリオンが好きだし、
ヌーソロジー界隈でエヴァンゲリオンといったら自分だろう・・・というわけではないですが、自分がエヴァについて書くのは天命だろう・・・ということで書いていくことにします。

ちなみに、好きな使途はラミエルです。
 

自分とエヴァについて

そもそも、自分とエヴァの関係はどんなものなのか?
まず、アニメ版のエヴァが放映されたのは1995年のあたりです。
放映してヒットした後に、たくさんのグッズが出たり二次創作で盛り上がったりパチンコになったり・・・と、色んなコンテンツで知名度の上がっていくエヴァですが、
原作はとてもワケの分からない変わったアニメだと評判のものです。

丁度、主題歌の『残酷な天使のテーゼ』に乗ったミュージックビデオがありますが、
以下のような「何だこれは」感こそが、エヴァという作品の原点だと思います。

とはいったものの、これが放映されてた当時、
自分は大体小学生ぐらいだったので、実はいうと別にクリティカルヒットだった世代ではないです。

どっちかというと、うちの兄あたりがクリティカルヒットな世代。
そんなわけで、自分が小学生ぐらいの時に、録画されたエヴァのアニメがやたらと流れてました。
父親も一応それの視聴者だったし、車に小型TVが装着してあって、ビデオ録画したものを、旅行での車移動中に観るという風習がうちにはあったので、エヴァの映像はわりと繰り返し流れてた覚えがあります。

自分はそれを見て「なんやこのやたらと暗いアニメは」とか思いながら、
小学生の当時だったのでそこまで面白いとは思わずに観てました。

そんでもって、だんだんと成長していくにつれ、後追いするようにエヴァを知ってくことになります。

先に述べたように兄はかなりハマってた勢なので、
家にはアニメのフィルムブックとかが揃ってあったり、
漫画版もそこそこ置いてあったりしました。

それを読んだり記憶を頼りにして、エヴァの内容を知っていくことになります。

そんでもって、大学時代あたりで本格的に「ちゃんとエヴァを観ておくか」と思って、
下宿での一人暮らしも始めてた時期だし、アニメ版をちゃんと観ておいたりしました。

そんな中、ちょうど2007年に新劇場版が始まったりしたので当然観て、それにともなって内容をまた復習したりします。

自分とエヴァの関係はそんな感じです。
 

貞本版エヴァと旧映画版エヴァの関係について

さて、今回の主題は「漫画版」のエヴァについて。
これは「貞本版エヴァ」とも呼ばれています。
1995年に始まって、2013年にようやく完結しました。全部で14巻。
完結になんやかんや19年も時間がかかった漫画としても有名です。

「貞本版エヴァ」は基本的にはアニメ版エヴァの内容をおさらいしているものです。
しかし、所々で展開が微妙に違っていたり、本編の補完がされていたりと、アニメ版とは微妙に異なるものにもなっているのが特徴です。
※内容の微妙な違いは、貞本義行さんの解釈によるものが大きいらしい。

漫画版はアニメ版と同様の内容が書かれているということで、
アニメ版の続きである旧映画版とも同様の内容が書かれています。
およそ、漫画の11巻から14巻(最終巻)までが、アニメの最後のあたりから旧映画版の展開へと繋がってく内容になっています。
ただ、ここでも所々で微妙に展開が違っていたり、本編の補完がされていたりと・・・旧映画版を観ているようで、内容の補完がされています。
つまり、貞本版エヴァの11巻から14巻では、
旧映画版では足りなかったものが表現されているし、結末も微妙に違っているわけです。
 

貞本版エヴァと旧映画版エヴァの違いついて


(※以下、漫画版エヴァのラストの話になるので、一応ネタバレ注意。)

貞本版エヴァと旧映画版エヴァはどう違っているのか?
とりあえず、台詞や展開といったものが微妙に違っている所があります。
原作ではこの登場人物はここでは出てこなかった…という所で登場してきたりとか。原作ではこの台詞は無かった…とか。

とはいえ、ゼーレによって人為的なサードインパクトが起こされることになり、
人類が皆L.C.Lの海に溶け込むことになる・・・といった大筋の話は大体一緒です。

しかし、一番大きいのは、その最終的な展開であり、
「シンジがアスカの首を絞めるシーンが無い」
という風に締めくくってあり、
その先の展開が作られている所です。
 

貞本版エヴァは「退行のタナトス」に向かっているのか?

Evamu

書籍『奥行きの子供達』で言われていたのは
「退行のタナトス」というものについてでした。
「タナトス」とは、フロイトが「死の衝動」として名付けた精神分析の用語で、「エロス」の対義語になります。
アニメのエヴァのそれは、だいたいは退行する方向に行ってしまっている・・・ということが、先の書籍で言われていました。

逃避の欲求を押し殺して仕方なく父に従い、人類全体は仕方なくL.C.Lに溶けて、最後にシンジは生き残ったが納得はしていない様を見せる・・・
そんな「虚無感」に向かってる雰囲気が、「退行のタナトス」に向かってる雰囲気です。

それから、半田さんはエヴァのラストで人類皆がL.C.Lの海に溶ける結末に批判的でした。
そりゃそうです。そもそもこれはゼーレとかいう怪しげな組織の思惑だし。

単純にサードインパクトによって人類が滅亡するのは、使徒がリリスと接触することによる偶発的な現象であり、それは使徒による人類の破壊にあたります。
それに対して、その現象にとある計画を仕込んで、全ての人間の魂を一ヶ所に集めて人工的な進化をうながす……というのが、ゼーレの目指す「人類補完計画」というものです。

全ての肉体がL.C.Lに溶け、加えて魂まで一ヶ所で一体となっているのは、あらゆる人の自己と他者が一体となっている「自他一体」の境地とも言えます。
とはいえ、これはあくまで「受動的なもの」としての「自他一体」の実現方法になります。いわば、人工的に「受動的な自他一体」を作り出すことが「人類補完計画」なわけです。
これは単純に言って良いものではないです。これ自体はまるでバッドエンドみたいなものでしょう。

ヌーソロジー的に人類が行きつく先とか、それからスピリチュアルで言われている「アセンション」とかいうのもありますが、
それらはどちらかというと「能動的な自他一体」であることが望ましいです。
「能動性」と「受動性」は、ヌーソロジーでも肝となる対の概念です。

ゼーレの「人類補完計画」とは「能動的なもの」とは反するものであり、
シンジとエヴァンゲリオン初号機は、それの実現のための依代として利用されることになります。
そして、ゼーレの企む計画は実現しました。

Eva1

しかし、シンジは最終的にはそれを拒むことになります。貞本版エヴァでは、そこの所が強調されていました。

Eva2
Eva3_1  
計画完了後の世界にて。

そして、シンジはまた「自他が分離した、他者と触れ合う世界へ」ということを望み、そちら側の世界がまた創造されることになります。
これが貞本版エヴァの結末です。

Eva4
ロンギヌスの槍とカシウスの槍による創造。

あと、シンジの母親である碇ユイが、父ゲンドウの前に登場して、その台詞が強調されています。

Eva10

以下がユイの発言。

Eva6

Eva7_1  

めちゃくちゃ女神です。

そして、ゲンドウに対してもあんまり否定的ではない。
ゲンドウは最後に満たされたような笑みを浮かべながら息をひきとることになります。

Eva8

Eva13

昔は超一流の科学者として活躍し、軍事機関の責任者にまでなった人物。
悪役みたいなようで、むちゃくちゃ頑張ってた「父なる存在」でしたもんね・・・

書籍『奥行きの子供たち』では、
エヴァという作品には「自我を育ててイデアに向かう存在がいない」と言われていましたが、
貞本版エヴァを見ると、ユイ、未来のシンジ、シンジと出会って成長した綾波レイ…あたりが恐らくその方向性になると思います。

そして、シンジは、自分とは違う「他者」と出会いながら生きるため、
新しい世界を創造し、
またそこで前を向いて生きていくことになります。

Eva9
新たな世界での出会い。

まさしくこの作品の方向性は・・・「人間賛歌」

・・・と、そんな感じでちゃんと締めくくってるのが貞本版エヴァの結末です。

一方で、2007年から始まった「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズの方の本編は、2012年に出た3作目の「Q」でストーリーがワケのワカラナイことになり、先の見通しが立たなくなってる所。
庵野監督はこれで鬱になったらしく、気分転換に『シン・ゴジラ』が作られるという始末。
次回作は2019年に「打ち入り」されたという告知があり、公開予定は2020年と言われてますが、もしかすると未定と言えば未定です。

そんな中で出てきたのが、2013年の貞本版エヴァの結末なので、現状ではこれが一番のグッドエンディングと捉えても良いと思います。
 

追記その1。解説動画

以上、貞本版エヴァについてでした。

人類補完計画とか死海文書とか、アダムとかリリスとか、ネルフの創立とかゲンドウの過去とか、
エヴァについての解説動画は以下が分かりやすいです。

元はニコニコ動画にアップされたものなので、
たいそう「(笑)」な内容の解説動画ですが、とりあえずとても分かりやすく説明されてます。
 

追記その2。ヌーソロジーの概念とエヴァの概念について

そんな感じで、エヴァにも詳しく、
そんでもってヌーソロジーにも詳しい自分なんで、
先の本『奥行きの子供達』を読んでも「ま、大体わかってたよ自分は」な所もあったりなかったり。

ちなみに、エヴァンゲリオンで出てくる登場人物・概念と、
ヌーソロジーの概念を、『ヌーソロジー基本概要+(プラス)』にも載せた『2Dタカヒマラテンプレート』と絡めて表記すると以下のようになります。

Evazentaizu

Eva11 
あとついでに、漫画版の1ページもここに置いときます。(12巻)

『定質』と『性質』は「人間登場前にあったもの」で、『反定質』と『反性質』は「人間登場後に出てきたもの」って解釈でだいたいOK。
あと、『反性質』は『反定質』を取り込んで成長していき、逆に『反定質』は『反性質』は取り込んで成長していく・・・みたいな流れがあります。

自分もこの辺は大体の解釈の見当をつけてます。
 

以上のように、
神話にある概念を整理して、臨場感を持って意識できるようになると良いと思います。


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「変換人生活のためのヒント」というテーマの書き下ろしテキストもあり。
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