前編↓
前編に引き続き、中編を書いていく。
(長くなったのでこの後にはさらに後編もある)
中編・後編は主に『次元観察子ψ13~ψ14』についてを掘り下げる回にしたいが・・・
同時に鳥山明について掘り下げる回にもしたい。何故なら、そこにはψ13~ψ14的なカルチャーも密接に関わってくるので、同様に言及していくと見えてくるものがあるからである。
そして、鳥山明について言及するなら・・・
あの人物についても避けては通れないため、まずはそれについて書く。
~目次~
・鳥山明と鳥嶋和彦
・アラレちゃんの誕生秘話
・天才と自我
・鳥山明の起こした革命
・アラレちゃん革命
・ドラゴンボール革命
・ドラゴンクエストのモンスター革命
・その他
鳥山明と鳥嶋和彦
鳥嶋和彦。
集英社に勤める漫画編集者で、鳥山明を育ててヒットに導いたと言われる伝説の編集者である。
ドラゴンクエスト開発の時にも裏で動いていたり、週刊少年ジャンプの編集長もやったり、取締役になるぐらい出世したり・・・経歴的にかなりやり手のビジネスマンっぽいエピソードがある。
『Dr.スランプ アラレちゃん』にて敵役の科学者『Dr.マシリト』として出てきたのが有名で…
『Dr.マシリト 最強漫画術』という本も出してる。
年齢的に鳥山明より三つ上ぐらいの近さであり、今はそこそこ高齢ながらも元気にご存命な人である。
『Dr.マシリト 最強漫画術』の本にはじめに書かれてる内容を引用すると、二人の出会いはこんな感じらしい。
Dr.マシリト登場時の裏話はこんな感じらしい。
それから、鳥嶋和彦からの視点だと以下のインタビューで語られている。
Q Dr.スランプでは、悪の科学者Dr.マシリトのモデルになりました。
A マッドサイエンティストの回があり、インパクトがなくてボツにした。僕が「お前のいちばん嫌いなやつ、嫌な奴を描いてこい」と言ったら、僕の顔を描いてきた。
Q ご本人としてははアリなんですか?
A いやー、無しだよ。でも締め切りギリギリで直す時間がなかった。しかもねえ、困ったことに読者アンケートでその回の人気が良かった。そうなるともう編集としてやめろとは言えないわけだ。
これを見ると、『Dr.マシリト』の登場はけっこうギリギリだったみたいである・・・
「こんなの無しだ!」といつものノリでボツを出しても良かったんだろうけど、実に面白かったので、時間がない中でこれ以上面白いものはできるのか・・・?と駆け引きがあったんだろうか?
実際に人気があったから止めるわけにはいかなくなり、羞恥心よりもプロ意識を優先することになってこんなことに・・・
『Dr.マシリト』はまさしく、鳥山明の天性の悪戯心と、鳥嶋和彦のプロ意識の高さから出た奇跡みたいなキャラクターである。
それから、鳥嶋和彦と鳥山明のやり取りについては、先ほどのインタビュー記事に大体のことは書いてあるため、読んでおくと良いだろう。
ジャンプ本誌連載までの流れをざっくり書くと・・・
鳥山明のデビュー作は『ワンダーアイランド』という作品で、1978年にジャンプで掲載された。
それは確かに絵はすごく上手かったが・・・とはいえ今のように面白いと言えるものではなく・・・人気投票で最下位になるぐらいのものだった・・・
しかし鳥嶋和彦は鳥山明に目をつけていたので、そこから修行と研鑽の日々が始まる・・・。1年間で500枚のボツ原稿という有名なエピソードがあり・・・
そんな苦労があった末に・・・ついに二人は1980年に『Dr.スランプ アラレちゃん』の連載を果たしたのである。
この二人の関係や鳥山明については、漫画家の山田玲司も解説していて面白い。
あと、漫画家の平松伸二という人も鳥嶋和彦と深い関わりがあり、
『そしてボクは外道マンになる』という自伝漫画でも鳥嶋和彦について書かれている。
これによると、笑い声が「人を不愉快にさせる怪鳥の奇声の様」とか書いてある・・・
恐ろしい・・・
アラレちゃんの誕生秘話
アラレちゃん誕生の裏話について書いておこう。
これには色んな話があるけど・・・例えば以下にも書かれている。
まずは鳥山明が「ハカセものの漫画を描きたい」と思う所から始まり、
「鳥嶋さんは女の子が好きだから女の子のロボットを出したら良いだろう」と漫画の下書きでアラレちゃんを見せてみた。
そうしたら案の定これが良かった。そしてその後が有名なエピソードで・・・本当は則巻せんべえの方を主人公にするつもりでアラレは一回限りのキャラのつもりだったが、鳥嶋和彦に「このロボットの女の子いいね! こっちを主人公にしよう」とまた強引なことを言われた。
それを聞いた鳥山明は、なるほどと思う部分もあったので試しにそうしてみたらしく・・・
・・・そうしたら連載が決まって、『Dr.スランプ アラレちゃん』がヒットしたわけである。
アラレが主人公になったのは鳥嶋和彦の戦略とはいえ…
アラレちゃん自体は「担当さんが女の子好きだから」と割と軽いノリで誕生したようである。
こうして、ジャンプで全く新しかった女の子ロボが主人公の漫画が爆誕した!
ちなみに当時、集英社の社員としてジャンプに配属された鳥嶋和彦は、まず『アストロ球団』という漫画を読まされたらしい。
当初は漫画嫌いだったのもあり、これも毒舌で酷評する対象になっていた。
しかしながら・・・自分もこれを実際に見てみると確かに非常に暑苦しい・・・
当時はこうした漫画が描かれる時代背景もあり、作家達も熱いド根性でヒットを目指し漫画を描いてて大変な時代だったのかもしれない・・・
ちなみに、鳥山明の生まれは1955年で、鳥嶋和彦の生まれは1952年。
この辺りは「シラケ世代」とも呼ばれるあたりで、アツいものより楽しいものが好かれるようになっていった変わり目の時代だったらしい。
そんな時代の中で二人の思想の気が合っていたのもアラレちゃん登場の所以だったと言えるだろう。
変わっていく時代の中、旧世代のアツ過ぎる風潮を打ち壊すには、これぐらい我が強い編集者と天才的な漫画家が必要だったのだろうか?
天才と自我
鳥山明は実際にリアルで会った感じだとどんな人だったのか?
その人間性に関しては、本当に悪い噂を何一つ聞かない。
「めちゃくちゃ凄いことをしているのに偉そうにしてなくて謙虚」
「腰が低くて良い人」
実際に会った色んな人からはそんな評判がある。
僕は漫画家になりたいのではなく、鳥山先生になりたくてこの道に進んだという感覚があります。
鳥山先生のように描きたかった。…— 村田雄介 (@NEBU_KURO) March 8, 2024
自伝で描いている雰囲気の通り飄々とした人間性であり、
行動原理が人間離れしている感じがある。
それと比べると・・・鳥嶋和彦の方は分かりやすい。
怪鳥のような奇怪さで人間離れしてる所はあるが・・・割と人間臭い動機なのが分かる人である。
売れる漫画を出したい。女の子が大好き。
出世したい。編集長になりたい(なった)。取締役になりたい(なった)。
代表取締役のように一番偉くなりたい(なった)。
集英社の子会社の白泉社の代表取締役になったら、今度は集英社を打倒したい(言ってたらしい)。
いかにも資本主義で生きることに向いた志を持つ人という感じであり…
しかもめちゃくちゃ優秀な人物である。
鳥山明と鳥嶋和彦・・・
この二人の関係を見てみると・・・まるで天才と自我の関係である。
鳥嶋和彦は自我が強い・・・と言うととてもそれっぽいのは分かるとして・・・
鳥山明は自我が・・・あまり強くなさそうだし、ほとんど無さそうなタイプである。
(スケベ心はあるとかそういう話はあるけど・・・)
これをどう表現したら良いだろうか・・・なんというか「無我」に近いような天才である。
この二人の組み合わせは、そんな無我(天才)と自我の二つが会合しながらも、
新しいものを作り出すために志を共にしていた関係である。
とくに鳥山明は、鳥嶋和彦という他者に対して面白い漫画を描くための必要なことを積極的に吸収していた。
この関係において、壮大な「自己×他者」のやり取りがあり…
『アラレちゃん』や『ドラゴンボール』は、その結晶のような作品だったと言えるだろう。
ビジネスの世界や人間の世界を大きく変えるような革新…
イノベーションの本質もそこにある・・・と思う。
そもそも、漫画は「他者視点」がないと描けないものである。
いや、正確に言うと「他者にとって読みやすい作品」を作るには「他者視点」がないといけない。自分一人で作りたいものを作るだけでも作品自体はできるが・・・他者にとって読みやすくて良い作品を作るには他者視点が必須だし、さらに「人気が出る作品」を作るのは非常に大変なため・・・他者のことをよく考えなければならない。
『Dr.マシリト 最強漫画術』の初めの方にも「成功する漫画は読みやすい」「読者の視点に合わせて描くことが不可欠」といったことが強調されている。
そうしたことを伝授できる鳥嶋和彦と、吸収できる鳥山明・・・
その両方にすごさがあるから、とてつもない作品ができたのだと思う。
鳥山明の起こした革命
さて、鳥山明の代表作とも言える三つを取り上げて、それを革新的な偉業とし…
「アラレちゃん革命」
「ドラゴンボール革命」
「ドラゴンクエストのモンスター革命」
と呼んで、それぞれについて書いていこう。
アラレちゃん革命
何度も書くようだが、鳥山明と鳥島和彦のやり取りで生まれた『Dr.スランプ アラレちゃん』は、当初は全く新しい漫画だった。
漫画家の山田玲司による解説だと、まず「70年代からの漫画の流れ」というのがあり、それには戦争や学生運動の敗北などの影響による暗さ、重さ、深刻感・・・といったものがあったらしい。
しかし、そうしたものから完全に解放された明るい漫画がアラレちゃんであり、そこから新しい80年代の漫画がスタートしたらしい。
アラレちゃんはそれまでにあった「男らしく強い存在」みたいな感じではなく・・・
まるで「無垢だけど最強の存在」みたいな感じだった。
そんなチートみたいな奴が暴れまわる漫画がこの時代から出てきた。
これはユングの元型でいうと童子神の如きものなのだろうか?
そして、80年代以降はそんなのがウケるようになったので・・・
そこから、いわば「アラレちゃん化」現象みたいなのがどんどん起きるようになっていたかもしれない。
そんな時代の中で1987年に自分が生誕するので・・・Raimu自身の個人的な変遷を辿っていくと・・・
まず『星のカービィ』とかが好きでゲームをよくやってる子供として育つ。兄の影響でファミコンもよくやってた。小学生の時にポケモンが発売された。
週刊少年ジャンプでは『とっても!ラッキーマン』『花さか天使テンテンくん』『世紀末リーダーたけし』などがあった覚えがある。まぁギャグ漫画に関しては赤塚富士夫の頃からあったものだが・・・
2001年から究極の不条理カオス漫画『ボボボーボ・ボーボボ』が登場する。
それから2000年代のネットでは「2ch」や「Flash」があって、それら電脳世界特有のカオスな文化が好まれて盛り上がるようになる。
さらに2006年、ネットで『ニコニコ動画』が登場。
そこで電波ソングが流行ったりして、『らき☆すた』が登場。
そこから「空気系(日常系)」と呼ばれるユルいジャンルが流行るようになる。
ニコニコ動画はさらにカオスなことになりちょぼらうにょぽみ・・・
2010年代は「ゆるキャラ」みたいなのもちょくちょく見かけるようになってくる。
最近ある漫画だと、カオスなものだと『ポプテ・ピピック』、
かわいいものだと『ちいかわ』などがある。
むちゃくちゃで面白いものや、かわいいものはTwitterでもバズりやすい。
そもそも「Twitter」もそうした「アラレちゃん化」したような世の中と非常に相性が良いSNSであるため、自分もずっと好んで使っている。
まさしくオタク向けのSNSの最先端である。
「アラレちゃん化」とは何なのだろうか?
本当にユングの元型でいう童子神に惹かれる者が増えていった世の中になってるのかもしれない?
それは非現実的で危なっかしい所もあるが・・・とはいえ、そもそもエゴの力で突き進む大人達も十分危なっかしいから必然的に起きているような所もある。
そうした「アラレちゃん化」が進む世の中の脳天気さを揺り戻すかのように…
漫画界隈では『進撃の巨人』が出てきてこれはこれで大ヒットしている。でも作者本人はシュールなギャグは好きそうだったり・・・・
そんな感じのことが起きるようになったのが現代の漫画カルチャーだと思う。
ドラゴンボール革命
次に『ドラゴンボール』について。
これは『Dr.スランプ アラレちゃん』の次で1984年から連載される大ヒット作品である。
『Dr.スランプ アラレちゃん』の連載を終えた鳥山明が、次に書く漫画は何にするか悩んでいた。
ちょうどその頃、映画好きの鳥山明はカンフー映画にハマっていた。
それを知った鳥島和彦は「じゃあ格闘マンガを書こう」と持ちかけた。
とはいえ、鳥山明的に格闘マンガを書くのはちょっと違う・・・と思ったらしいので、
西遊記をベースに冒険と格闘をミックスした『ドラゴンボール』の連載がはじまった。
そんなわけで『ドラゴンボール』は冒険譚のようでいながらも、カンフー映画がベースになってるような所がある。
悟空が子供だった頃の初期の『ドラゴンボール』は、割とのんびりした雰囲気で面白おかしく冒険する楽しい物語という感じであり…
後の殺伐とした展開と比べると、こちらの方はだいぶ優しい内容になっている。
個人的には『ドラゴンボールZ』の頃よりこの頃の方が好きであり、同様の感想を持つ者も少なくはないだろう。
しかしながら、これも鳥山明の精神性が投影されているが故なのか、主人公の悟空が何を意志するキャラクターなのかがイマイチ掴みずらく、そういう面で少しパッとしない感じになっていて、ジャンプでの人気が微妙だった。
そしてまた鳥島和彦によるテコ入れがされ、「天下一武道会」を開催するストーリーにして格闘マンガにシフトするようになる。
すると人気が一気に上がっていきジャンプで一番人気になり、完全なバトルマンガになっていった。
そして、孫悟空少年編はピッコロ大魔王編で大きく変化したりして・・・
さらに孫悟空大人編が始まる。アニメだと『ドラゴンボールZ』とも呼ばれる章である。
みんながよく知るドラゴンボールのイメージはこれだろう。
ここからベジータやスーパーサイヤ人といったのが出てきて、ドラゴンボールシリーズで人気な所といったらこの辺である。
さて、そんな経緯で作られたドラゴンボールであるが・・・
ドラゴンボールの凄さはとにかく人気なことである。
アメリカやヨーロッパでの人気があるだけでなく、
南米やアフリカの黒人や、中東のイスラム圏の人達など・・・
我々が馴染みのない文化でもめちゃくちゃウケてるらしい。
そもそも海外の人にとっては「気」の発想が新しい。
日本だと「気って聞いたことあるし、まぁそういうのもアリかもね」みたいな感覚で捉えることができるが、海外の人にとってはそんなことない。
かめはめ破とか気の弾を飛ばして攻撃するとか・・・そんな超能力的なもので出てきて戦うって発想がそもそも根本的にあり得ない。黒人の文化でそんなのが想像できるのだろうか? イスラム教の人にそんなのが想像できるのだろうか?
さらに死後の世界とかも普通にあって平然と生き返るし、生まれ変わりもある・・・
これは一体どうなんだろうか?
異国の文化の人にとってこれはどんな衝撃があるのか想像できないが・・・とにかくウケてるみたいである。
日本といったらポケモンとドラゴンボールの二大筆頭だってぐらいウケている。
ビートルズやディズニーやハリーポッターに近いレベルの世界コンテンツとしてウケていると言っても良いだろう。
これによって、世界から見た日本の知名度とすごさが上がっているだろう。
もしかすると国際外交面でもこれはそれなりに有利になるのでは?
アメリカや中国などの先進国で好かれるのは良いことなのは当然として…
東南アジアなどの発展途上国で好かれるのも心強い。
例えばサウジアラビアとかも面白く、産油国家でイスラム教の国なのに日本のアニメや漫画が人気である。
サウジアラビアについては以前にもこのブログで扱った。
『ドラゴンボール』のテーマパーク建設が開始されたということでも話題になった。
是非ともサウジアラビアみたいな産油国家にも日本を好きになっていただき、これからも安定した石油供給が続いて欲しい。そうでないと最悪の場合は死活問題になってしまう。
ただ、そんな『ドラゴンボール』だが、鳥山明がこの漫画をジャンプで連載している中、人気過ぎてなかなか止めることができなくてイヤイヤ続ける感じになっていたのは有名な話である。
これは特に『ドラゴンボールZ』のあたりで顕著だった。
その辺りはベジータ登場の「サイヤ人編」の後に「フリーザ編」「セル編」「魔人ブウ編」と続いていき・・・なかなか凶悪な敵達の登場で殺伐とした内容にもなったが、バトルマンガとして盛り上がっていたので世間での人気は高かった。
正直、この辺りの創作は純粋な鳥山明の意識から出てきたというより・・・鳥嶋和彦や集英社の「売りたい」欲望もかなり受けていただろう。
しかしながら、これが世界中で大ヒットすることになるわけである。
恐らく、鳥山明はとんでもない天才なので、どんな生き方をしていてもどこかしらで成功はしてたと思う。
ただ、鳥嶋和彦と出会わなかったら、海外での日本のイメージの中心となるレベルの世界的ヒット作品はできなかったのではないだろうか?
『ドラゴンボール』の世界的ヒットは、鳥山明がすごいのは当然として、鳥嶋和彦の陰謀の成功によるものなのだろうか?
ドラゴンクエストのモンスター革命
第三の偉業として、鳥山明といったら『ドラゴンクエスト』である。
『ドラゴンクエスト』も日本を代表するゲームというぐらい有名で革命的な作品だが・・・
この作品は堀井雄二やすぎやまこういちの凄さや、その他のゲーム開発メンバーのすごさも絡んでくる。
その中でも鳥山明の功績でいったら、モンスターデザインにあると思う。
代表モンスターである「スライム」のインパクトとかすごかった。
西洋のモンスターをそのまま描いただけではこうはならなかった。
西洋のモンスターの価値観でいくと、普通はモンスターといったら「恐いもの」だったが…
それを「親しめるもの」にデザインしたのが鳥山明だった。
強くて恐ろしいかもしれないけど、可愛いかもしれないし格好いいかもしれない・・・
鳥山明のモンスターはそんな感じのデザインであり、それが多くの人にウケることになった。
鳥山明のモンスターデザインの幅の広さは本当に天才的だと思う。
これを越えるモンスターデザイナーは古今東西どこを探してもいないかもしれない・・・
そんな『ドラゴンクエスト』がリリースされたのは1986年であり…
さらに「モンスターが仲間になる」仕様が出てくるのは1992年発売の『ドラゴンクエストⅤ』である。
それから、それとは別に1996年に『ポケットモンスター』が登場する。
これも日本を代表する超ヒットコンテンツだが、もしかするとドラクエやアラレちゃんの影響も受けていた所もあったのではないだろうか?
個人的に日本で最も完成度の高いデザインのドラゴンのキャラクターは…
鳥山明のデザインしたドラゴンか、ポケモンのリザードンの二つだと思う。
ちなみに、ポケモンが流行った時、そのパクりみたいモンスターゲームがいっぱい出た。
当時は小学生として当事者だったからよく覚えてる。
『高気圧ボーイ』『ロボットポンコッツ』『サンリオタイムネット』『携帯電獣テレファング』『メダロット』・・・
なんか色々出てた覚えがあるが・・・近所の友人で買ってる人はそんな見当たらなかったし、そこまで見向きはされなかったように思う。
(その中でも『メダロット』は異色の面白さがあったので、個人的にポケモンよりそれにハマる道へ進んだりするのだが・・・それはさておき・・・)
これは当たり前な話であるが・・・この手のモンスターゲームはモンスターが魅力的でないと全然やる気が出ない。
ゲームのモンスターはプレイヤーにとって主人公にかなり近い存在でもあるので重要であるし、感情移入できるモンスターでないといけないぐらい、優れたデザインのモンスターでないといけない。
だからモンスターデザインというのはすごく難しいジャンルなんだと思う。
そんな中で1998年、『ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランド』発売される。
これもポケモンを後追いするコンテンツの一種であるが、これに関してはめちゃくちゃヒットしていた。
ここに出てくるモンスターは、ほとんど鳥山明がデザインしたものである。(厳密にいうとすべてがそうなのかは微妙な所だが・・・ほとんどはそうであるし、鳥山明を参考にして作られたモンスターである)
だからモンスターデザインのクオリティは文句なしに高かった。
当時のゲームボーイのヒット作品といったら、ポケモンとモンスターズの二大筆頭である。
そうした「モンスター」の奥の深さに関しては、実は中沢新一が『ポケットモンスター』を通じて考察していて…
それについてはブログで以前に書いたことがある。
モンスターは「どこから来るのかわからない」「つぎつぎと際限なくあられる」といった性質がある。
それから、我々の意識や無意識の中には、いわば「へり」(池・穴などに接したすぐそば。そのものに入るすぐ手前)のようなものがあり、その「へり」の部分は、なんとも言語化しづらいものとか、意識化したい欲動があるんだけどはっきり意識化しづらいものとか・・・なんというかそんなものがある。
そして、そうした「へり」からさまざまなかたちをとって現れてくる、なんとも言えない存在が表象してくることがあり・・・その象徴が「モンスター」なのである・・・と、中沢新一は説明していた。
まさしく文化人類学者のような視点から「モンスター」について考察されているわけである。
・・・とはいったものの、現代のポップカルチャーにおいてそれが出てくると・・・いわば「深淵さ」と「ポップさ」の混合で出てくる感じになるだろう。
もっと言うと、今のカルチャーのほとんどが「ポップさ」で埋めつくされているかもしれないが・・・
しかしながら、そんな「深淵さ」と「ポップさ」が混じりながらも・・・ヌーソロジー的には『次元観察子ψ14』の在り処のような虚構の場所に生息しているのが現代の「モンスター」ということになるのではないだろうか?
その他
先の三つの作品以外にも、自分的に好きな作品についてここで紹介しておこう。
『COWA!』
単行本一冊分で完結する短編ストーリー。
『ドラゴンボール』が終わった後の1997年に描かれた作品である。
まず、当時の週刊少年ジャンプはちょっと大変な状況だった。
『ドラゴンボール』は1984年~1995年で長く続いていた末に連載が終了したわけだが…
人気作品終了ショックによってジャンプの売り上げが激減してしまったらしい。
その立て直しのためにジャンプ本誌に呼び戻されて編集長に就任したのが・・・あの伝説の編集者、鳥嶋和彦だった!
そして、鳥嶋和彦は早速、鳥山明にまた漫画を描くように依頼する。
鳥山明は正直『ドラゴンボール』の連載が大変過ぎたのもあり、あまり乗り気ではなかったらしいが・・・とはいえお世話になった鳥嶋さんの頼みとあれば無碍にもできない・・・
そうやって、また鳥嶋和彦の強引さによって漫画を描くことになった。
そんな経緯で描かれた漫画が『COWA!』だが、この作品は鳥山明自身が「すべての作品の中でいちばん大スキなマンガであります!」と述べるほど好きな作品であり…
個人的にもなんとなく内容を思い出すことが多くて一番印象に残っているのでRaimuのイチオシ作品である。
内容はお化けの世界を描くホラーコメディであり…
とある人間と関って村のために外に出ることにもなる冒険譚である。
殺伐とした内容だった『ドラゴンボールZ』のイメージと違い、初期の『ドラゴンボール』や『アラレちゃん』のようにノホホンとした内容に近い。
それでいて『ドラゴンボール』の連載で培ったバトルシーンが描かれている箇所もあり、ベテランが描く漫画らしいクオリティの高さが伺える。
お化けが主人公の作品・・・というと、水木しげるの『ゲゲゲの鬼太郎』がある。
その辺の雰囲気にも近い所があるかもしれない。
鳥山明の性格と水木しげるの性格はなんとなく近しいものがあるかもしれず、「お化けの世界」は鳥山明の理想とする世界観と非常にマッチしている印象がある。
そんなわけで、鳥山明の性格がよく表れている名作ということでオススメしたい。
『SAND LAND』
これも単行本一冊分で完結する短編ストーリー。
2000年にジャンプで連載された。
鳥山明自身によって「『COWA!』と並んでお気に入り」とコメントされてるらしく、これも本人にとってかなり好きな部類らしい。
主人公は魔族の王子ベルゼブブであり、他にも「魔族」やそれに属するモンスターたちが登場する。
魔族のベルゼブブと、渋い爺さんみたいな保安官のラオと、爺さんみたいな魔族のシーフの三人で砂漠を冒険する冒険譚である。
この作品の良い所は、とにかく「鳥山明が好きそうなものばかり描かれていて面白い」所である。
魔族の王子、渋くて強い爺さん、モンスター達、戦車、格闘シーン、その他ユニークなキャラクター達・・・
ぜんぶ鳥山明の好きなものであり、本人が好きなものばかりを描いてて面白いのが活き活きとしたものを感じて良い。
ストーリーが分かりやすいのも功を奏し、数か国語で翻訳出版されたりと、海外での人気も高いらしい。
そして、人気があった作品というわけで2023年。
3Dアニメーションによる映画化が決定した!
自分も観た。
原作を忠実に再現しながらも、物足りない箇所を補完するような内容でもあり大変よく出来てて満足だった!
文句無しのオススメ作品である。
・・・・以上。
今回は鳥山明について語る回みたいになってしまったが・・・
ここからちゃんと『次元観察子ψ13~ψ14』についてをやっていく。
長くなったので、さらに(後編)へと続こう。
↓続き