【連載】陰陽哲学

陰陽哲学基本概要(16) ~人間が依存しやすいもの~

投稿日:2024年8月24日 更新日:

不定期連載『陰陽哲学基本概要』シリーズ。 記事一覧はこちら。


前回、以下の仕組みについて説明した。

今回はそれを踏まえて、「我々人間が依存しやすいもの」の話をしていこう。
 

分かりやすい物質性

まず、我々人間が依存しやすいものの特徴を考えた場合、思いあたるのは・・・
「分かりやすく認識しやすいもの」である。

その簡単な例を挙げるなら、「分かりやすい宗教」である。
例えば「すごく偉くて正しそうなことを言ってみんなが信じている魅力的な神様」がいたとしたら、みんながそれを信じて大きな宗教として確立したりする。キリスト教なども分かりやすくて魅力的だから世界中でウケている。
キリスト教をベースにした新興宗教なども、そこそこ大きい宗教になるぐらいウケやすい。

現代では宗教はあまりウケなくとも、テレビや広告で分かりやすく宣伝されているものは皆にとって信じられやすいし、「お金があった方が偉い」とか「学歴が高い方が偉い」みたいな分かりやすい価値観を有名な人が賛美していると、皆が魅力的に感じてその方向に行きがちである。

このように人間が一番認識しやすいものは、陰陽哲学の「元陽」「元陰」「顕陽」「顕陰」の4つの中だと何が該当するだろうか?
それはこれまでずっと説明してきた通り、「顕陽」が該当する。

「顕陽」と「顕陰」は主に人間の世界にある陰陽であり、その中で光が当たっている領域が「顕陽」である。そこにはありとあらゆる「分かりやすいもの」があり、一般的な人間はそれが周りにある中で生きていく。

そんな「顕陽」は「言葉によって提示されているもの」がある領域でもある。

その代表例は先ほども挙げた「宗教」である。
人間は昔から魅力的な宗教を言語によって作り、それを精神的な支えにしながら生きていった。

学問が発達するようになってからは「学歴」が支持されるようになった。
昔の中国や昔の日本でも、儒教のような学問が普及するようになってからはそうした知識が豊富な賢い者が支持されるようになっていった。
日本だと明治時代から近代化がどんどん進んでいくにつれて、古来の宗教よりも学歴が重視されるような社会になっていった。

そして、現代は資本主義社会である。
資本主義において「持っていると分かりやすく偉いもの」といったら・・・「金」である。
金があれば便利だしたくさん持ってると偉い。金をたくさん稼げる人は魅力的。地獄の沙汰も金次第。そうした価値観は実に「分かりやすいもの」だと言えるだろう。
さらに金銭的な成功を称える言葉がメディアで発信されればされるほど、その傾向は強くなる。

また、テレビやネットが発達した文化においては「承認欲求」で動く人が増えていった。
テレビで有名になりたい欲みたいなものは一昔前からあっただろうが・・・
ネットが発達した最近だと、SNSの「いいね」数や、再生数や閲覧数などの分かりやすい数値や、数値獲得によるランキングの上位進出など、SNSのシステムによって有名になる手段と、それによって承認欲求を満たす手段が出てくるようになった。
そんな「ネットでの承認を巡る文化」みたいなものが新たに発生してきたため、「承認欲求」が現代人の欲望として比重が高くなってるのではないだろうか?

現代の人間の四大欲求「金・暴力・セックス・承認」とした場合・・・

「金・承認」が「顕陽」における二大筆頭になるかもしれない。

金とネットの情報が飛び交う現代社会では特に…
それらをベースとした「分かりやすいもの」に我々は依存しやすいようになっているわけである。
 

気持ちのいい物質性

次に我々人間が依存しやすいものは何なのか?

先の「顕陽」のように「言葉によって提示されているもの」に依存しない方向でも、つい依存してしまうものを考えてみよう。
もしも言葉で説明されているものに頼るのに止めた時に、何に頼った方が良いか?を考えたらどうなるか分かるだろうか?・・・

そうなると「気持ちのいいもの」に依存するようになる。

言語に頼らないとなると感覚に頼ることになるのだが、それはそれで何が正解かが分かりにくく、主観ベースの正しさに頼ることになり、繊細で微妙な世界になる。
感覚を主体とするなら「気持ちがいいかどうか」で判断することになるわけだが・・・この辺りの感覚の話をつきつめると動物的な欲求みたいな領域の話にもなってくるし、判断が非常に難しい。

そうした領域は物質的な「現陰」にあるものに該当する。

この領域は、言語後の世界一歩手前あたりだと、実は動物的な世界のようになっている。

人間に「金・暴力・セックス・承認」の四大欲求があるとすると・・・

その中で「暴力・セックス」がそこにあるものに該当するだろう。

四大欲求の「金・暴力・セックス・承認」の中で、人間は「金・承認」にも依存しやすいが、それは動物にとっては高度な知性がないと発生しない欲求であり、人間しか持つことがない。
しかし、それを抜いたとしても「暴力・セックス」が残り、そこにある「気持ちのいいもの」にもまた我々人間は依存しやすい。

そうした動物由来の欲求も人間にとって欠かすことができないわけである。
 

合致協力する物質的なペア

要するに、我々人間が依存しやすいものは、簡潔に言うと「分かりやすいもの」と「気持ちのいいもの」の二つであり…
それらは「金・承認」と「暴力・セックス」の二組でもあり…
それぞれ「顕陽」と「元陰」で違う領域で機能しているのである。

我々が生きる人間社会は、そうした物質的ペアがどんどん盛り上がっていきながら発展している。

とくに資本主義社会がそうであり、人間のそうした欲望を加速させるシステムとして資本主義は機能している。

現代の商売人やインフルエンサーが何か物を売る場合も…
だいたいそんな感じのものを売ろうとするのが分かるだろうか?

 

売れる商品や稼げる商品に向かっていくのが資本主義なため、それが当然なわけである。
 

また、「顕陽&元陰」の物質的ペアのモデルは、以下で説明した「新・元陰」と絡めて考えても良い。

陰陽哲学基本概要(14) ~陰陽の先にあるものとヌーソロジー~

それを踏まえると、以下のように表すこともできる。

「新・元陰」は現代社会が向かう先の世界でもあるため…
こちらでイメージした方がしっくり来るかもしれない?
 

以上のように陰陽論的に「我々人間が依存しやすいもの」を整理して考えると・・・
「分かりやすいもの」と「気持ちのいいもの」の中で物質的に強くなり、分かりやすいステータスを得て、強くなる気持ちよさを味わいながら強者となることを目標にするのは簡単だが・・・
実現するとなるとそう簡単ではない。
みんながそうした強者になれるほど、世の中はそんな単純にできていない。

それとは違う世界とは何なのか?もまた陰陽論的に考えていきたい所である。

 
↓続き

陰陽哲学基本概要(17)~君たちはどう生きるか?~


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