【連載】陰陽哲学

■陰陽哲学基本概要(11) ~陰陽論と老子の思想(前編)~

投稿日:2023年11月26日 更新日:

不定期連載『陰陽哲学基本概要』シリーズ。 記事一覧はこちら。


前回までは孔子と儒教についてをやった。

今回は老子と道教についてをやろうと思う。

儒教とは別の意味で、老子と陰陽論の関わりは密接である。

老子の思想自体に柔と剛、有と無、虚と実のような概念が出てくるし、
易経の歴史だと、王弼という人物が老荘思想を元に易経を解釈したと言われている。

陰陽の本質を知るには老子の思想が必要不可欠・・・ということで説明していこう。
 

老子についてのおさらい

はじめに「老子とは何か?」についてから。

老子は孔子よりも出生や生い立ちに謎が多く、実在の人物ではなかったという説まである。
実在時期は紀元前571年?から紀元前471年?あたりとされているが、正確ではないので「?」がついている。

この辺りの歴史の事実関係を把握するには、司馬遷という有名な歴史家が記した歴史書『史記』の記述に頼るしかない。
孔子が礼の教えを受けるために老子に会ったことがあると歴史書に残されていることから、二人は同じ時代に生きていたとされる説が一般的に有力であり、老子のが一回り年上だろうと推測される。

記録に残っている老子は中国春秋時代の周の書庫の記録官みたいな仕事をしていた。

博識ながらも有名になることは好まず、ひっそりと過ごしていたが、周の楚国で過ごす中、国の衰えを悟ったので去ることを決めた。
その時、関所の役人のとある人物に「先生はまさに隠棲なさろうとお見受けしましたが、何卒私に(教えを)書いてくれませんか?」みたいなことを頼まれたので、漢文で五千数百字程度の書を残した。
それが『老子道徳経』と呼ばれて後世に伝えられる。
その後のことは誰も知らない・・・

・・・というのが老子の一生として書かれていることのほとんどで、
他の生い立ちについては不明なので謎が多い。

もう一つ残っているエピソードは、孔子が老子に会った時の話である。
これは『十八史略』という歴史読本にまとめられている。

孔子は礼の教えを受けるために老子に会いにいった。お互い丁重な挨拶から始まり、いろいろなことを教わって有意義な時間を過ごすことができた。
孔子は故郷の魯国に戻ってからもよく老子を褒めたたえていて、以下のように弟子に言った。

鳥吾知其能飛。魚吾知其能游。獣吾知其能走。走者可以為罔、游者可以為綸、飛者可以為矰。至於竜、吾不能知其乗風雲而上天。

「鳥は飛ぶことは私は知っている。魚は泳ぐことも私は知っている。獣は走ることも私は知っている。走るものは網で捕らえ、泳ぐものは糸で釣り、飛ぶものは糸をつけた矢で射落とすことができる。しかし龍に至っては、風雲に乗って天に上がるが、私はそれを知ることができない。老子も龍のような人だった」

 
以上のように、「老子は例えるなら龍のような人物」みたいな話が伝説として残っている。

 
それから、200年ぐらい経って老子の後に活躍したのが荘子である。

荘子は紀元前369年頃に生まれた人物で、老子の思想に共感してその思想を継いで広めることをしていた。
老子の弟子のような人物であるが、同じ時代に生きていたわけではない。

最小限の言葉でこの世の真理を簡潔に記述することに長けているのが老子としたら、ユニークな例え話を駆使して色んな話をするのに長けているのが荘子、みたいな感じで二人は中国古典の世界で残っていった。

この二つはセットにすると相性が良くて学びやすいため、「老荘思想」と括られるのが一般的になる。
 

道教の成り立ち

老子の思想が後に宗教で使われるようになってできたのが「道教」である。

これの発端が登場してから初期道教が成熟するにかけての時期は、だいたい二世紀後半から五世紀前半あたりのことになるらしい。

二世紀後半の後漢末期の時代、「太平道」という呪術を使った民間治療を行う一派が出てきた。

太平道は「黄巾の乱」(184年)という大規模農民反乱を起こした。
「黄巾の乱」といったらあの『三国志』にも出てくるぐらい有名である。
太平道は三国志に出てくる曹操が戦った相手であり、しかも、その大規模反乱が後に漢王朝の衰退に繋がり、劉備の「蜀」、曹操の「魏」、孫権の「呉」が分かれる三国時代になった。
三国志のストーリーの始まりあたりに出てくるエピソードである。

太平道の思想は後の道教にも通じているため、道教のルーツを遡ると必ず出てくる話だが、この一派の道教に関して言えば・・・老子は全然関係ない。
つまり道教は老子の神格化が有名なため老子が発端のようにされているが、実際の発端は太平道のような民間信仰であったとも言える。

太平道の登場には疫病の流行が重大要素であったと言われている。
人類は昔から疫病や感染病をどうするかで悩むことが多かったし、当時の中国でも疫病についての記述が残されているから、疫病の流行に悩んでいたらしい。
そのため、疫病に対して昔の時代なりの治療方法や対処方法が必要で、太平道は民間呪術的な発想で病気に対処するための宗教だった。
こうした「病気を治療するための呪術」は道教にも通じてる。

「太平道」と同時期あたりに「五斗米道」という一派も出てくる。
五斗米道も太平道と同様に病気治療を目的とした宗教だったため、成り立ちは太平道に似ていた。
そして、この一派の中では老子の『道徳経』がとくに重んじられていた。
だからこの一派の道教においては老子がかなり関係してくる。
また、この一派は創始者の死後、後に「天師道」と呼ばれる一派になる。

さて、この辺りの歴史だとあの三国志の英雄、曹操が関係してくる。
曹操は太平道との戦争で手を焼いたが、五斗米道はそこまで過激な団体ではなかった。
だから曹操は五斗米道に対しては懐柔処置をすることにした。そうしている内に、その信仰が政権内部でどんどん広がるようになっていき・・・さらにそこからその教えが色んな所に伝わるようになり、一般民衆から大士族まで・・・多くの人が信仰するようになった。
その中で、大手の士族の中からさらに書家として有名な王義之(312~)が、道士のために『道徳経』『黄庭経』といった書物を残し、それが広まっていったりもした。

また、それとは別の動きとして、葛洪(283~)という人物が活躍していて、『抱朴子』という書物を残した。これは仙術に関する諸説を集大成したものであり、道教の経典として広く伝えられるようになった。
この人は道教だけでなく儒教に関することも書いていた博識な著述家だが、非常にクオリティの高い仙術の理論書を書いたことから道教研究家として知られている。

大体この辺りの時期に道教の主要な経典が出来上がってきたらしい。

さらにその後の西暦420年。南北朝時代と言われる頃、陸修静(406~)という道士が大きな道教改革を行った。
当時流通していた多くの道教の書物を収集して整理し、道教経典が系統化されるようになった。

その一方で、北方では寇謙之(365~)という道士が、当時の皇帝の太武帝の支持を受け、道教の一派である天師道の大改革を行った。
皇帝のバックアップの元、道教国家の理想を実現しようとする流れがこの時に起きていた。
 

以上。ここまでで道教がどのように伝達されていったかについて細かい所まで見ると他にも色んなことが起きているが・・・
そんな感じで初期道教が確立していき、広まっていったわけである。
 

唐王朝の成立からの道教

さらに時代が進んで西暦618年。「唐」王朝の成立した。

唐の建国者は李淵という人物で、実は唐王朝の成立には道教が関わっていると伝えられているぐらい密接な関係がある。
李淵がまだ皇帝になる前に挙兵してた時の話で、有名な導士に優れた君主となることを予言されたみたいなエピソードがあったらしい。
また、「李」の姓を老子の一族としたてあげて、権威づけをしながら皇帝の地位を会得した事情もあり、そうした政治的な繋がりもあった。

そんな感じで道教と縁のある李淵から始まったのが唐王朝時代の中国であり、初代皇帝は李淵、二代目皇帝が李世民、三代目が高宗、四代目が玄宗・・・と続いていくが・・・その皇帝達が道教を尊重する態度は一貫していた。

とくに四代目の玄宗が道教を熱心に信仰していた。
そのエピソードは色々あり・・・老子を崇める像や建物をあちこちに作る、正式な手続きで道士の資格を得て道士皇帝になる、道教経典の整理を進めさせる、道教音楽を盛んに行う、科挙の試験の科目に道挙科が設けられる・・・など、道教の普及に関することが色々と行われている。

ちなみに、「皇帝が水銀を飲んで中毒死する話」がよく出てくるのも唐の時代辺りであり、これも道教由来のエピソードである。
昔の道教は「不老不死」を本気で目指す無茶さがあり、中国の導士の術の一つである「錬丹術」では不老不死の薬が研究されていた。
不老不死の薬を作るにあたって水銀が注目されたり、他にも硫黄や鉛やヒ素といった危ない物質が使われた薬が作られるようになった。そんな薬を不老不死の薬と信じて皇帝が飲んで、それによって体調を崩したり中毒死したりする事例が多く出てくるようになった。
秦の時代でも始皇帝が不老不死を目指して水銀によって亡くなった伝承があるが、唐の時代で皇帝が中毒死した記録が一番多く残っている。

そんな感じで唐の時代では道教が盛んになったので、さらに色んな方面で発展していくようになる。

この辺りになるといつのまにか「老子が道教の始祖」といった言説が出てきている。
だから「道教の発端は老子」のように思われるが、正確なルーツは太平道や五斗米道のような民間信仰だと考えるとそうではないとも言える。

唐の時代の道教は五斗米道から派生した天師道が有名だが、他にも「楼観派」というものや「北帝派」というものもあった。
道教は色んな流派がありながらも発展していったものであることも踏まえておこう。

あと、この辺りだと仏教の分野で智顗(538~)が天台宗を立ち上げて、有名な座禅マニュアルである『天台小止観』や『摩訶止観』を残した後だった。
そうした仏教の座禅のような瞑想法と、道教の瞑想法が融合するような動きもあった。
そもそも、道教は仏教と融合しながら発展することが昔からあり、仏教で仏像を作られて民間信仰されるように、道教でも偶像が作られて民間信仰されていった。
それに伴い、中国の各地では道教の寺が作られていて、その文化が現代でも残っている。
 

道教の成り立ちまとめ

以上。唐の時代あたりまでのざっくりした道教の成り立ちについて説明してきた。

ひとまず、これまで出てきた主要な人物や出来事をまとめると以下のようになる。

道教の歴史を辿っていくと、「太平道」や「五斗米道」、唐代の皇帝達が中核にあるのは確かだが・・・
その他にも有名人物があっちこっちで色々いたり、色んな流派があっちこっちにあって合流したりするので、全貌を掴もうとすると難しい・・・
紀元前500年頃の老子の思想よりもずっと前にあった仙道を道教のルーツとする説もある。

そんな感じで、「道教は様々な民間信仰や流派が集約されていってできたもの」ということを理解しておこう。
 

道教とはどんなものか?

これまで道教の歴史について書いていったので・・・
次に「道教はどんなものなのか?」の内容について説明していこう。

道教は一言でいうと「仙人になるための宗教」みたいなものである・・・しかしながら、それには色んな要素が含まれている。
仙人になる道は「神仙道」と呼ばれ、そこで扱われる術は「神仙術」と呼ばれている。「外丹」と呼ばれるものや「内丹」と呼ばれるものとか、護符を使ったり仙薬を作ったりするものとか、気功術とか瞑想法とか儀式魔術とか・・・そうした道教特有の呪術のようなものが色々とある。
それから、独自の宇宙論(天界、地上の仙人、鬼の世界などがある世界観)があるのでそれを学んでいったり、有名な道教の経典を学んでいったりする。
そんな感じで、仙人として不老長寿を目指したり、仙人としての教義を学んだりしていくわけである。

また、名前が「道教」なので、老子が示した「道(タオ)」という真理を崇拝したりもするし、老子の哲学の解釈を真剣にやったりもする。
道教において老子は神格化され「太上老君」と呼ばれている。「道(タオ)」が神格化した存在の「元始天尊」という神様もいる。
道教における「神」は他にも色々といるが、基本的に多神教ベースの宗教である。

道教は中国の三大宗教の一つとして、寺があちこちで立っているぐらい普及しているのは確かなのだが、その全貌を掴むのが難しい・・・
道教の研究者が書いたちゃんとした書籍でも、道教は全貌を掴むのが難しいと書いてあるぐらい難しい。
国教として統一感のある儒教と比べると、道教の場合はその性質が全然違っている。

仙人を目指すとか呪術を扱うとかが道教の内容だったり、老子の哲学の真髄を掴もうとすることも道教の内容だったりするが、人によって研究するものが違ったり、地方によって流行ってるものが違ったりするから、そうなると収集がつかないぐらい多様なことになる。

そもそも、発端が呪術を使った民間治療であり、あちこちで色んな流派が作られながら広がっていったので、全貌を掴むのが難しいわけである。
老子の思想によって道教が成立したというより、中国各地に伝わる呪術や民間療法が統合されてできたものが道教という側面もある。

そんな多様な道教であるが、一貫して「氣」(もとい「気」。人体に流れる意識エネルギーみたいなもの)を扱っているため、「氣を扱う宗教」という説もあり、老子を氣の化身する考え方もある。
だから「気功」の分野も道教と絡んでいる。

そんな感じで、道教は難解というよりは、なんだか得体のしれないものを扱っていて近寄りがたいものかもしれない。

老荘思想は老子の思想がベースになっているが、道教は呪術を重視する宗教がベースの思想になっている。
儒教の場合は「儒教≒孔子の思想」と大まかに言えるようなものになっているが、
道教の場合は「道教≠老子の思想」とハッキリ言えるものである。

道教の根本思想に「道(タオ)」の概念と老子の思想を置いている流派もあるので、そこに行き着く者もいるかもしれないし、行き着かない者もいるかもしれない。何が重要視されているかは流派や地方によって違ったりするので、その全貌は掴みづらい。老子が重視されているか、呪術が重視されているかは分からない。

そうした多様性を持った宗教が道教である。
 

世俗化する道教

道教では老子が神格化され、その像を立てられたり崇拝されたりしている。
これは仏教の影響を受けていて、大乗仏教で仏像を作って崇拝する習慣の模倣である。
道教は仏教と融合してそれを模倣する特徴があるので、それによって道教の寺も建てられるようになった。

そんな感じで、儒教が国教になって世俗化するように、道教も世俗化して広まっているような所がある。

老子を神格化して偶像崇拝をしたり、仏教と融合して現世利益のための寺が建ったり、健康と幸運をもたらすための護符にすがったり、仙人を目指すけどそれは人間の欲に基づいていたり・・・そんなことがあちこちで起きるのが道教の特徴だと言っても良いだろう。

このように世俗化している道教だが・・・そもそも、もともと世俗的なものが道教なのでは?と言える面もある。

大元の道教とされる太平道や五斗米道も 病気の治療が主な方針の宗教だった。
ただ純粋に儀式や祈祷を行っていた原始儒教と比べると、原始道教の方が「他者を助けるための宗教」みたいな思想が根底にあったのかもしれない。

太平道による病気の治療方法は独特であり、これを真面目に考察するとなかなか面白い。
太平道の教えによると、病気の人間は何かしらの「罪」があり、神が罰を下しているのだと見なす。
だから病人に自分の犯した罪を懺悔告白させ、霊水を飲ませ、呪符を用いた処置をし、神の許しを請う願文を唱えさせる。

五斗米道の治療方法も大体同様であり、まずは病人に自らの罪を反省させる。
その後に、呪符による処置をほどこした特殊な水(符水)を飲ませる。この時代はこうした行いを「治療行為」として一般大衆にも受け入れられていた。
(ちなみに、人体のほとんどが水でできているため、水は氣の伝達に効率が良いとされている)

「病は気から」はなんとなく現代日本でも通じる言説だが、本気でそれが信じられていた時代の医療である。

現代のようにウィルスを電子顕微鏡で確認したり、遺伝子の配列まですべて明らかにすることができたり、感染者の体液からウィルスの一部を検出して遺伝子解析でどのウィルスか判別したり・・・そんな便利なことができる時代と違って、昔は「ウィルスによる病気」はとにかく得体の知れない「病」だった。
「ウィルスによる病気」と「呪い」の区別をすることができなかったのが昔の人類である。すべてひっくるめて「病」とされていたのが当時の常識だった。

だから、病は心や氣から来るものとして精神分析的に対処し、氣の伝達に効率の良い「水」を適切に処方する・・・みたいなことをして治療をしていたわけである。

しかし、これを応用して・・・例えば水に対して御符を使ったり何かしらの処置をして、それに「霊水」とか「波動水」みたいな名前をつけて、神聖で病を良くするものとして売り出せば・・・・
うーん・・・現代スピリチュアルでも何か心あたりがある・・・・

それから、「疫病が流行るとそのための民間療法が流行り、そのための宗教が流行る」というのも・・・
うーん・・・これも最近あったことでものすごく心あたりがある・・・

そんな感じで世俗化している道教だが、だからこそ意外と奥深いものにも通じていると考察することもできるのではないだろうか?
 

道教の全貌まとめ

以上。道教は「色々やっていて全貌がよく分からない」とよく言われているわけだが・・・

やっていることを整理してまとめると、およそ以下のようになる。

・老子の思想
 ・老子道徳経の哲学的解釈
 ・無為や虚柔の思想
 ・老荘思想
・宇宙論
・呪術
 ・護符魔術(霊符作り)
 ・儀式魔術
 ・祭事
 ・道教音楽
・神仙術、気功
 ・外丹(仙薬作り、錬丹術)
 ・内丹(気功法、瞑想法)
・仏教との融合
 ・偶像作り
 ・仏教的な経典作り
 ・寺院設立

 

道教と日本

道教は中国で有名な宗教ということで、当然日本にも伝えられるようになる。

ただ、日本に伝えられたと言っても・・・仏教や儒教とは違って「道教を日本に伝えた人もいるらしい」ぐらいのレベルと言って良いだろう。

日本における仏教の浸透ぶりは言うまでもないとして、儒教も江戸時代に作られた国内初の教科書のベースに使われたぐらいだから、根っ子の部分の思想形成において非常に影響力がある。
それと比べて、現代日本において道教が伝えられていると感じる所はどれほどあるだろうか?

調べると道教の影響を受けている寺は確かに存在するし、神社の中にも道教の影響を受けたものが作られることもある。
平安時代だと安倍晴明といった「陰陽師」の活躍が有名であり、その術は陰陽五行説・易経・神道・仏教・道教の混合であったため道教の影響も確実に含まれているが・・・
とはいえ道教の影響が今でも強いことを示すほどのものではない。

そうして探せば影響を受けている所もあるわけだが・・・逆に言うと探さないと無いかもしれない。日本にとっての道教はそれぐらいの影響力である。

得体が知れなくてよく分からない道教よりも、どちらかと言うと老荘思想の方が一部の人にウケてる感じで影響力が大きいのではないだろうか?

老荘思想しかり道教しかり、国が採用することがなかなかないサブカルチャーみたいな思想であるため、日本に対しての影響力はそんな感じである。
 

老子から道教までまとめ

さて、老子と道教についてまとめると以下のようになる。

老子:
孔子に並ぶ超有名人物。
実在したのか疑われるぐらい謎が多いが、
『老子道徳経』という非常に簡潔な書籍を残した。

荘子:
老子よりも後の時代、
老子の思想を引き継ぐように活躍した弟子のような人物。
「老荘思想」としてセットにされることが多い。

太平道:
道教の一種とされるもの。
三国志で有名な「黄巾の乱」を起こし、曹操と戦う。
これに関しては老子は関係ない。
疫病の治療を主な目的とした宗教集団だった。
原始道教みたいなものに位置づけられる。

五斗米道:
道教の一種とされるもの。
太平道と似たような思想で大体同時期に発生する。
これは老子が重要視される。
曹操が懐柔処置をしているうちに、信仰者がどんどん拡大する。
後に「天師道」と呼ばれる一派になる。

道教:
老子が神格化されている宗教。
主に仙人を目指す宗教であり、そのための神仙術や呪術を扱う宗教みたいになっている。
皇帝が道教を崇拝してた時期があったり、
仏教と融合して偶像や寺ができたりする。
流派が多様で全貌を掴むのが難しい。
中国の各地に伝わる民間信仰や呪術がまとまってできたものとも言われている。

仙道・神仙道:
仙人を目指すための道。
中国で大昔からあったアニミズムでもあり、
これも原始道教みたいなものに位置づけられる。
必然的に道教と合流し、道教の一貫となる。

練丹術:
仙人の術の一つであり、道教で扱われる術でもある。
不老長寿のための仙薬・霊薬を作るための術。
不老長寿のための霊薬は「丹」と呼ばれ、
薬として物理的に生成したものは「外丹」と呼ばれる。
一時期、不老不死の薬を作ろうとしていて、
水銀などの危ないものを材料にしたせいで皇帝が中毒死することがあった。

気功:
科学で説明できない生命エネルギー「氣」を扱う。
道教で用いられる術でも出てくる。
不老長寿のための霊薬(丹)を体内で作ったものは「内丹」と呼ばれ、
それを作るための瞑想法も気功の分野にある。
道教には老子を氣の化身とする思想もある。
氣の発想は汎用性があるので色んな所で出てくる。

 
 
以上。今回も長くなってしまったので、
ここで一旦区切って続きは次回とする。
 

↓続き

■陰陽哲学基本概要(12) ~陰陽論と老子の思想(後編)~


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哲学、シャーマニズム、数学、神学、古代文明、意識進化、オカルト・・・など色んなジャンルが絡んでくる内容のもので、これを読めば『ヌーソロジー』ってどんなものなのかがざっくりと分かるようになるはず。

「陽」や「陰」、「天」や「地」といった概念を基本とする中国の古代思想『陰陽論』や『易経』についてちゃんと説明するテキスト。さらに西洋哲学や精神分析学、ヌーソロジーの概念とも絡めてその哲学を深めていく。

ユング心理学が専門でありながら古今東西の文化や宗教全般にも詳しく、スクールカウンセラーとして数多くの実績を持つ偉人、河合隼雄さんの書籍を読み直してその思想を学ぶシリーズ。

超能力や魔術の研究や、物理学・量子力学を絡めた解明を目的に、少しずつ書いていった連載記事。

正式名称は『はじめての人でもホロスコープを自分で読めるようになるための記事』。西洋占星術で出した結果をある程度の所まで読めるようになることを目的とした記事。

『note』のテキストコンテンツとして執筆。社会不適合者が生き残るための考え方や知恵をテーマにしたテキスト。1~5でとりあえず一区切り。
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